政府が7年ぶりの節電要請 東電は新たな節電プランを開始
財界オンライン / 2022年6月23日 18時0分
政府が家庭や企業に対して今夏の節電を要請した。2016年の電力小売り全面自由化以降、採算性が悪い老朽化した火力発電所の休廃止が相次ぎ、電力の供給余力が乏しくなったためだ。
電力の安定供給には、需要に対して供給力にどれだけ余裕があるかを示す「予備率」が最低3%必要とされる。今夏が10年に1度の暑さに見舞われた場合、7月の電力予備率は中部・東京・東北各電力管内で3・1%とギリギリの水準。今冬は東電管内でマイナスになる可能性があり、経済産業省は休止中の火力発電所の再稼働を促進するなど対応を進めるが、萩生田光一経済産業相は「予断を許さない状況が続く」と警戒感を口にした。
政府が国民に節電や省エネを呼び掛ける中で、東京電力エナジーパートナーでは家庭の省エネを促そうと、節電量に応じてポイントを付与する新たなプログラムを開始。3%節電することを目標に、今年7月から9月までの3カ月間で延べ45万人の参加を見込んでいる。
東京電力エナジーパートナー常務執行役員販売本部お客さま営業部長の芳野恵一氏は「正直、3・1%の予備率に対するインパクトは少ないが、1カ月で15万人参加すると1千万㌔㍗時程度の節電になる」と話す。
首都圏を中心に電力不足が慢性化する背景には、安定電源である原発の再稼働が停滞していることに加え、電力自由化で激しい販売競争にさらされた大手電力会社が収益確保を優先し、火力発電所への設備投資を絞っていることがある。ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格高騰で電気料金も上がり続け、「安価な電力を安定的に供給する」というエネルギー政策の土台そのものが揺らいでいる形だ。
電力会社は自由化対応を理由にコスト削減を優先。政府や経産省は世論の反発を恐れて原発活用を巡る中長期的な方針を示せていない。
だが、いつまでもエネルギー安全保障を巡る議論を先送りしていいわけではない。2018年度の日本のエネルギー自給率は11・8%。エネルギー源のほとんどを海外からの輸入に頼る日本にとって、液化天然ガス(LNG)や原油などの価格高騰や円安は企業や個人の負担増に直結する。理想と現実の狭間でエネルギー安全保障をどう確立するか。改めて国、企業、個人それぞれの役割を考える時だ。
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