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【コロナ禍で変化する飲料業界】キリンVSコカ・コーラ なぜ今、「紅茶飲料戦争」なのか?

財界オンライン / 2022年6月27日 7時0分

誕生30年を迎えた「紅茶花伝」ブランドで総合ブランド化を図る日本コカ・コーラ

いま、紅茶飲料が熱い─。茶葉の種類や量、甘さや香りなど個性を打ち出しやすいという特性に加え、コーヒーやお茶から紅茶に乗り換える消費者が増えているからだ。そんな中で「午後の紅茶」ブランドで首位に立つキリンビバレッジ追撃に向け、日本コカ・コーラが動き出している。誕生30年を迎えた「紅茶花伝」ブランドで総合ブランド化を図る考えだ。舌が肥えている消費者を相手に、味の多様化が勝負の鍵を握っていると言えそうだ。

「紅茶花伝」の30年にわたる〝逆張り〟の商品展開

「これまで紅茶は休日のティータイムなどの特別なシーンに飲むものだった。しかしコロナ禍を経て、日常的に飲むものに変化しつつある」─。こう強調するのは日本コカ・コーラ マーケティング本部 止渇系無糖茶・機能性茶・紅茶事業部 部長の山腰欣吾氏だ。

 特別から日常へ─。コロナ禍を契機に紅茶飲料業界では、こんな嗜好の変化が起こっている。コロナ禍の2019年から紅茶飲料市場は拡大し、購入者数はもちろん、紅茶飲料を購入する頻度も増加。既存のリーフティーやティーバッグと共に家庭内の紅茶消費量も増加傾向だ。

 そんな紅茶市場で攻勢をかけているのが日本コカ・コーラ。同社の紅茶飲料と言えば、1992年に誕生した「紅茶花伝」が有名だ。同社は誕生から30年を迎えたこの「紅茶花伝」で、紅茶市場での存在感を高める狙い。

 同部止渇系無糖茶・機能性茶・紅茶事業部マネジャーの田中惇也氏は「コロナ禍で在宅勤務が増えて紅茶が身近になった。昼間に缶コーヒーを飲んだり、仕事終わりにジュースを飲む消費者が紅茶を飲むようになった」と分析した上で、「コーヒーほど重くなく、香りの華やかさや爽やかな渋みを持つ紅茶に注目が集まっている」と語る。

 この趣向の変化は女性のみならず、男性にもみられるようだ。実際、「紅茶花伝」の飲用者は19年比で2桁近く増加。実は日本コカ・コーラはこの「紅茶花伝」の「総合紅茶ブランド化」(同)を進めていた。

「紅茶花伝」は上質な紅茶として「厳選素材とこだわりのひと手間」というポリシーを貫いてきた。具体的には、茶葉は厳しい独自規格を満たした農園の手摘み茶葉を使用し、ティーポットで淹れる紅茶のように紅茶本来の香りや味わいを引き出した。

 ただ、課題もあった。「紅茶花伝」と言えば、95年に発売を始めた「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー」が主流だったからだ。脱脂粉乳を使わず、国産牛乳だけを100%利用するなど差別化を図り、〝逆張り〟とも言える商品展開で存在感を高めた。

 例えば、バブル崩壊で誰もが懸命に働いていた当時、さっぱりした味わいや軽やかさが主流だった中で「あえて濃厚なリッチな味わいにこだわった」(田中氏)。350ミリリットルの缶が主流だった中でも、「少量の180ミリリットル缶を展開するなど、紅茶が持つ非日常的なイメージを前面に出した」(同)。その結果、「『紅茶花伝』はミルクティーでブランドを築いてきた」(山腰氏)。逆に言えば、「紅茶花伝」=ミルクティーというイメージが根付いたわけだ。

 その後、新たなニーズにも対応する必要が出てきた。甘さにネガティブな印象を持つ中高年層がブラックコーヒーなどを嗜むようになった18年、「紅茶花伝」は〝脱・甘さ〟の商品を投入する。地方活性化が叫ばれ、農産物の産地などに付加価値が置かれるようになったときだ。

 そこで同社は「紅茶に果汁をたっぷり注ぐ」をコンセプトにした「紅茶花伝 クラフティー」を投入した。「果汁をたくさん入れると共に、ハチミツを加えることで罪悪感のない上品な甘さを実現した」(山腰氏)のである。

 具体的には、「紅茶花伝 贅沢しぼりピーチティー」と「紅茶花伝 贅沢しぼりオレンジティー」を投入。このクラフティーシリーズの累計出荷本数は3億9000万本を突破(21年12月末時点)。21年の「紅茶花伝 贅沢しぼりピーチティー」には山梨白桃、「紅茶花伝 贅沢しぼりオレンジティー」には宮崎日向夏が使われ、さらに新たなフレーバーとなる瀬戸内レモンを使った「紅茶花伝 贅沢しぼりレモンティー」も発売した。

 そして足元で高まる健康志向を捉えた商品が「紅茶花伝 無糖ストレートティー」だ。このようにバリエーションが増えたことで、「食事中は無糖ストレートティー、おやつ代わりに果汁の入ったクラフティーと飲用シーンに合わせて飲み分けられるようになった」と田中氏。

 これらの取り組みの結果、「紅茶花伝」は今では年間1300万ケース規模の販売数を誇るまでに成長した。ただ、首位のキリンビバレッジの背中は遠い。同社の「午後の紅茶」は年間5000万ケース規模を販売するガリバーとして君臨している。



「午後の紅茶」や「ボス」も健康や果汁の新商品を投入

 その同社も手を打つ。科学的根拠を持つキリン独自の機能性素材「プラズマ乳酸菌」を含む商品やファンケルと共同開発した商品など、健康を意識した午後の紅茶ブランドを発売。「ヘルスケアは成長戦略の幹」(キリンビバレッジ社長の吉村透留氏)として力を入れていく考えだ。

 また、紅茶業界では新参者のサントリー食品インターナショナルも「クラフトボス」のブランドで、5種類の果実を使用したフルーツティーを発売するなど競争の熾烈化は必至だ。

 そんな中での日本コカ・コーラの紅茶飲料の新戦略では、ブランドロゴやパッケージデザインを刷新し、商品全体に統一感を持たせた。ロイヤルミルクティーと多彩なフレーバーを持つクラフティーなど、ラインナップの拡充によって〝選べる楽しさ〟を訴求。山腰氏は「原材料の組み合わせの可能性は大きい」と紅茶の潜在力を強調する。

 そもそも日本コカ・コーラは主力炭酸商品の「コカ・コーラ」やミネラルウォーターの「い・ろ・は・す」でも、様々な味の派生商品を継続的に市場に投入し、確固たるブランドを確立。それを紅茶市場でも展開する。

 紅茶飲料市場は約2000億円規模。飲料全体に占める紅茶の比率は1割程度と小さい。しかし、コロナ禍でオフィス需要の減少などで伸び悩む飲料業界にあって、紅茶飲料の人気は高まっている。原材料の高騰など懸念材料も多い中で、消費者のニーズを汲み取りながら、いかに自社のこだわりを商品に反映させていけるか。各社が知恵を絞って鎬を削ることになる。

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