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【経済安全保障が言われる中】「混沌の世」に基本軸をいかにつくるか?

財界オンライン / 2022年7月16日 11時30分

企業の盛衰を決める「値上げ」
 値上げが、その企業の盛衰を決める─。コロナ禍が2年半続く。今年2月には、ロシアによるウクライナ侵攻が起こり、食品とエネルギーを中心に原材料価格が高騰、今自らの製品値上げをいつ、そしてどれくらいの値幅で行うか、経営者の最大決定事項となっている。

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 値上げして収益の上がったところ、逆に値上げして消費者にソッポを向かれ、収益が悪化し、場合によっては赤字に転落した食品会社もある。

 元々、値上げには敏感な日本。基本的には値上げそのものが、消費者離れを引き起こすという空気の中で、企業経営者もナーバスになってきていた。

 1997年に日本はデフレに入ったとされ、20数年、同じ状況が続く中での今回の製品値上げである。

 値上げする事態の直接の引き金となったウクライナ危機だが、他の国の人々の命を無残に奪う戦争をロシアが平気で引き起こす現実に世界中が戸惑いと失望を覚えた。

経済安全保障問題にはどう対処するか
 経営者としては、何が起こるかわからない今日的状況において、常に生き残り策を探っておかなくてはならない。今風に言えば、サステナビリティ(経営の持続性)をいかに確保していくかというテーマである。

 元々、人口減、少子化・高齢化という現象は始まっていた。人口減が始まったのは2008年頃。65歳以上の高齢者が占める比率は30%近くと世界一の〝高齢社会〟である。こうした流れをどう読み、どう手を打っていくか。

 ズバリ、市場縮小であり、内需依存から脱却すべく、海外市場開拓に努めてきた企業は高利益を実現し、いわゆるグローバル経営を推進してきた。

 海外市場開拓という形で高収益が上げられると思い込んでいたところへ、ウクライナ危機の勃発。海外市場も一筋縄ではいかなくなってきている。

 一つは経済安全保障の問題もある。野放図に海外市場開拓ということを言っておれない状況である。

 自分達の持つ技術やノウハウが自らの国の安全保障に抵触しないかどうかを常に確認しながら、その国への進出の可否を決めなければならなくなった。国の生き方と企業の生き方の整合性が求められる時代である。

「本当にこの問題はナーバスな問題」と某経済団体首脳は語り、「例えば中国市場一つ取っても、相当に神経を使わなければならなくなった」と本音を漏らす。

 そして、同首脳は、「国は経済安全保障で、この経済活動はセーフ、この活動は駄目といった線引きをしっかりやってほしい」と本音をもらす。

 自らの価値観だけに頼っていては生きてはいけない時代になった。ロシアによるウクライナ侵攻問題でも同じことが言える。我々は民主主義陣営であり、日米同盟を基本に日本の針路を決めていかなくてはならない。現にIPEF(インド太平洋経済枠組み、日米印豪など14カ国の枠組み)などの動きが進む。

 また、G7(日米欧など先進7カ国)といった既存の枠組みでの協議も進む。一方、ロシアは中国との連携を進め、これにはインドやトルコなどもロシアとの関係を維持するなど、微妙な駆け引きが国際間で行われているのも現実。

 国連の場でもロシア非難一色ばかりではない。日米欧の先進国の常識では、ロシア非難という動きでまとまるが、ロシアに配慮する国も相当数ある。

日本企業の役割は「つなぐ」
 民主主義対非民主主義の色分けでいけば、非民主主義国の方が多いという指摘もある。世界は複雑である。多面的に物事を見ていかなければならないという現実がそこにはある。

 日本企業の生き方とは何か?  それは『つなぐ』ということにあるのではないか。明治維新(1868年)から150年が経つ。欧米に追いつけ追い越せで戦前までやってきて、一等国の地位に並ぼうとした途端、太平洋戦争(第2次世界大戦)が起きた。

 日清・日露の両戦役で勝ち、第1次世界大戦でも戦勝国の側に入った日本だが、第2次大戦では敗戦国となった。まさに驕れる者久しからずの例え通りである。明治維新から、その敗戦まで77年だった。

 その敗戦から戦後復興にかけて日本国民は必死に働いた。戦後から高度成長期を経て、1968年(昭和43年)にGDP(国内総生産)で当時の西ドイツ(現ドイツ)を抜き、米国に次ぐ自由世界第2の経済大国となった。

 しかし、無資源国の悲哀である。1973年の第1次石油ショック、そして第2次石油ショックを経て成熟時代となり、1980年代のバブル期を経て、90年代初めにバブルが崩壊。以降、「失われた30年」が続く。

 明治維新からみれば、今年は150年という節目。先の大戦の敗戦からは77年が経つ。

 国のあり方、企業のガバナンス(統治)、個人の生き方・働き方をどう選択していくか。

 日本には課題もあるが、良さも同時にある。ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)などに通ずる〝三方よし〟の精神、共生の思想などである。その良さをどう掘り起こしていくか。

 ネット社会になり、GAFAMが生まれた米国、一方、そうした世界に影響を与える企業が米国と比べて少ない日本のあり方をどう考えるか。まさにここは日本企業にとって正念場であり、企業経営者はもちろんのこと、国民1人ひとりにとって課せられる課題である。日本の使命と存在感が問われている。

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