「世界不況」は避けられないのか?BNPパリバチーフエコノミストの危機感
財界オンライン / 2022年7月19日 11時30分
年明け以降、国際資本市場の調整が続いている。筆者は、コロナ対応による大規模な財政・金融緩和で嵩上げした資産ブームの調整と位置付けている。いわばコロナバブルの崩壊だ。基軸通貨国の場合、バブルの崩壊過程では、国内への資金回帰が生じるため、自国通貨高がもたらされる。それゆえ、トリプル安ではなく、「債券安、株安、ドル高」が観測される。
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ここにきて、そうした動きが加速したのは、5月の米国物価統計において、インフレが再加速したことがきっかけだ。米国の企業と家計のインフレマインドが亢進していることを、金融市場とFRBが過小評価していた。見通しの誤りが明らかになり、インフレ抑制に必要とされる政策金利の予想経路が大幅に切り上がり、債券安と株安が加速したのである。
米国では、住宅ローン金利の大幅上昇で、住宅投資への悪影響が既に明確化している。コロナ禍の下での超低金利を背景に、テレワーク可能なゆとりある高所得層が、郊外の住宅を購入していた。耐久財も、低金利の下で将来の需要の相当な先食いが行われたため、金利上昇で大幅な調整は避けられないだろう。
問題は、住宅投資や耐久財消費が落ち込んでも、米国経済が簡単には減速しない可能性があることだ。現在、人々の需要は耐久財消費から、旅行や外食などサービス消費にシフトしている。巣籠りで抑えられたサービスへのペントアップ需要が盛り上がっているのだ。コロナ終息で人々は楽観になり、若者だけでなく、中高年も夏のバカンスの準備に精を出すありさまだ。サービス消費は金利に非感応的だから、サービス消費の減速には、大幅な金利上昇が必要で、耐久財消費はさらに落ち込む可能性がある。
そうなると、そのダメージを被るのは、耐久財を米国に供給する新興国や日本、ドイツなどの工業国である。サービス消費の旺盛な米国経済が減速するまでに、グローバル経済が大きく落ち込むリスクがあるだろう。
また、米国の景気が過熱傾向なのは、経済再開で、ペントアップ需要が顕在化していることだけが原因ではない。楽観になっているがゆえに、留保賃金が上昇し、コロナが終息しても、仕事に戻らない人が今もいるのだ。需要ばかりが先行して回復し、労働供給の回復が遅れているから、超人手不足が続き、高賃金・高インフレの原因となっている。
働かなくてすんでいたのは、コロナ禍でお金を使わなかっただけでなく、住宅や株式など保有資産の価格が高騰していたことも影響している。金利上昇で株価や住宅価格の下落が続けば、サービス需要が減速し始めるだけでなく、労働参加も回復し、需給逼迫が和らいでくるだろう。
あれほどの大きな需要の嵩上げがあったため、その調整過程で、不況は避けられないのだろうが、問題は、それが軽微なもので済むか、深刻なものになるかである。
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