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【富士フイルム】が目指す”唯一無二”の医療バリューチェーンづくり

財界オンライン / 2022年7月21日 18時0分

インドで健診センターを開設。がんや生活習慣病の早期発見を目指す(写真はイメージ)

日本発の検診サービスをインドなどの新興国へ発信

 インド南部のベンガルール(旧バンガロール)にある健康診断センター『NURA(ニューラ)』。ここでは、肺がんや胃がんなどのがん検診を中心に、生活習慣病の検査やコンピューター断層撮影装置(CT)を使って心筋梗塞リスクを早期発見する検査などが行われている。

 実はこの検診センターを運営しているのが、富士フイルム。同社の現地法人が2021年にインドで病院運営を行う現地企業と合弁会社を立ち上げた。

 高精細な診断画像を提供するマンモグラフィーなどのX線画像診断装置や、画像強調技術で観察画像の視認性を高めた内視鏡システムなど、様々な医療機器を手掛ける富士フイルム。ここにAI(人工知能)技術を組み合わせることによって、医師の診断を支援。がん検診を中心とした高品質な健診サービスを提供しようという取り組みだ。

「疾病の早期発見により、医療課題を解決する日本型の検診サービスを提供していく。検診という文化は日本にしかなく、海外にはない。様々な機器にAIを搭載することによって、日本型の検診サービスをインドなどの発展途上国に展開していく」

 富士フイルムホールディングス執行役員メディカルシステム開発センター長の鍋田敏之氏はこう語る。

 新興国におけるがんの罹患(りかん)者の生存率は先進国と比べて低く、中でも、インドではがん罹患者の5年生存率が約3割(日本は約7割)しかない。この生存率を向上させるためには、定期検診による早期発見と早期治療が重要だが、新興国ではがん検診サービスを提供する施設が少ない上、健診をする文化も定着していない。

 そこで、AIや画像データを集約するITシステム、医療機器、サービスの3つを持っていることを強みに、同社は日本発の質の高い検診サービスを海外に発信していく考え。

「われわれのビジネスは医療格差をなくすことに主眼を置いている。今までは既存の製品やサービスを提供することが役割だったが、これからはAIを活用したデータ連携を進めることで、モノ売りから継続的なモノ+コト売りへの転換を図る。そのことで富士フイルムにしかできない唯一無二の医療バリューチェーンの形成を目指す」(鍋田氏)
 
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 近年、産業界のあらゆる分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を耳にするようになった。現在はコロナ禍で個人や企業の働き方が大きく変化していることもあり、DXに向けた企業の取り組みが加速している。

 そうした中、富士フイルムは経済産業省や東京証券取引所が選ぶ「DX銘柄 2022」に選定。DXの取り組みの一つがインドでの検診サービスだ。

 執行役員CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)の杉本征剛氏は「当社には製品・サービス、業務、人材、ITインフラを含めた4つのDX基盤があり、それぞれにきめ細かい戦略を立てて実行している。従業員一人ひとりのマインドセットを変えるところまで徹底しているところが最大の特徴。お客様に新たな価値を提供し、社会課題の解決に貢献したい」と話す。

 富士フイルムHDは元会長の古森重隆氏がこの6月に最高顧問を退任。今後、同社の経営のかじ取りは昨年から社長をつとめる後藤禎一氏に託される。

 古森氏の時代は、写真フィルム事業で培ってきた技術にデジタル技術を掛け合わせることで成長してきた。後藤氏はヘルスケアや高機能材料、複合機などの事業をDX化し、同社を新たな成長ステージに持っていくことはできるか。後藤氏の真の実行力が試されている。

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