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元防衛大臣・森本敏「日本の課題は国家と国民の主体性と自主性を取り戻すこと」

財界オンライン / 2022年7月20日 18時0分

日本の役割があると思わせるためには…

 ―― 既存の世界秩序が変わろうとする中で、日本の役割をどう考えますか。

 森本 日本は他の国にできないことをやらなければならないです。経済協力も増やす必要がありますが、問題なのは、日本に主体性や自立性がないことです。今までの保守政権には、米国についていけばいいという考えしかない。これからは自主性を維持して独自の手段や防衛力を持たないといけません。

 そのため、まずハイブリッド戦の能力を強化すべきです。宇宙やサイバー、特に、偵察衛星やサイバーインテリジェンスの能力を格段に強化していかないと、米国に依存する体質ではダメだということです。

 ―― 主体性を持つべきというテーマは、戦後77年一貫して提起されている課題ですよね。

 森本 55年体制は崩壊しました。今は次の時代に備える時期です。例えば、核問題を議論するなら、日本は独自に核を保有することは憲法上できませんが、非核三原則(核を持たず、作らず、持ち込ませず)を改正して、三番目の米国による核の持ち込みを許し、自ら原子力潜水艦を保有するべきだと思います。

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 原子力潜水艦は韓国や豪州もこれから保有すると思いますが、これは核戦力を持つということではありません。船を動かす推進力が原子力になるということです。潜水艦に小型の原子炉を載せることにより、常時、浮上しなくてよくなる。

 通常型の潜水艦は一定期間たてば潜望鏡を水面に上げて空気を取り入れる必要があり、敵国から攻撃を受ける。理論上、原子力潜水艦は長時間潜航が可能で、そうでないと中国の原子力潜水艦に対応できない。

 早期警戒衛星でも、その都度、米国から情報をもらうのを待っているようでは遅い。ミサイルを撃たれても、自分たちで探知できないようでは独立した国家の防衛は成り立たない。更に、日本にはインテリジェンス(情報)という大きな課題があります。日本には7つの情報機関があるんですが、横の連携や情報共有は少ない。

 米国にはNSA(国家情報局)のようなシギント情報機関があり、米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドの英語圏5カ国は「ファイブアイズ」という枠組みをつくって、情報を常に共有しています。

 ―― 要するに、自分の国は自分で守るという体制が全然できていないということですね。

 森本 国際秩序はまだ定まらず、とりわけ、中国の影響力が拡大してくる時に必ず直面するのは台湾問題です。そのために、日本の安全保障や防衛は今のままでいいのかという重大問題がある。

 今回、我々は安倍元総理という世界に誇るリーダーを非条理な事件で失いました。日本国民としては誠に悔しくて耐え難い気持ちです。しかし、日本はこのような社会だったのか。日本人はこういう人種なのか自らに厳しく問いただす必要がある。

 これを警備だけの問題にしてはならない。我々の社会に深く浸透している誤った自由主義、自己利益しか考えない個人主義が問題なのです。自立性と自己規律に欠ける社会では明るい未来はないと思います。参議院選挙も終わりました。腰を据えて日本の国家の在り方、国家安全保障戦略を議論する必要があると思います。

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