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日本総合研究所会長・寺島実郎「いま問われているのは、戦後80年を経た日本人の叡智」

財界オンライン / 2022年7月22日 18時0分

そろそろアベノミクス幻想から目覚めよ

 ―― 参議院選挙は終わりましたが、新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナ侵攻、食料・エネルギー価格の高騰と、日本の様々な対応が問われています。寺島さんは岸田政権の課題をどのように認識していますか。

 寺島 岸田政権が打ち出している「新しい資本主義」というのは、公益資本主義が大切だというところまでは結構だとしても、国民全員が「貯蓄から投資へ」などという話は理解できません。これは証券会社の社長が話しているなら別ですが、国のリーダーが、貯蓄をやめて投資しようと呼びかけるのは違うような気がします。

 かつて、わたしが商社マンとして働き出した頃、日本人のセールスマンは皆トランジスタのセールスマンかと言われたものですが、国の指導者までもがマネーゲームのセールスマンみたいになるというのは何なのでしょうか。

 当然ですが、国家の指導者が語るべきことは、産業の基盤をどう創生するのか。産業基盤をどのように付加価値の高いものにしていくか。技術を磨いて、国際競争力をどのように高めていくのか。そういう話をしなければいけない時に、マネーゲームの旗を振るような話しかしていないことの問題を、もっと真剣に考えるべきです。

 ―― 問題意識の低さというか。

 寺島 そうです。日本の問題意識のある産業人が気づくべきことは、そろそろアベノミクス幻想から目覚めなければいけない、ということです。

 アベノミクス幻想とは何かというと、要するに、政治がリーダーシップをとって中央銀行を押さえて、金融をじゃぶじゃぶにし、金融政策で景気を浮上させられるという幻想です。これは誰が悪いという次元の低い批判をしているわけではない。なぜなら、産業界もマスコミも一体となって、金融をじゃぶじゃぶにして、株高と円安にもっていこうとしたわけですから。

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 ―― 問題はなぜ、そこまで一気に円安になるのかということですね。

 寺島 円相場は6月に一時1㌦=137円となり、24年ぶりの安値を付けました。最近、円水準はどのくらいが適切かとよく聞かれるのですが、今、IMF(国際通貨基金)が公表している購買力平価(PPP)ベースでの円の実力は、91円15銭です。

 ですから、2011年に75円と、70円台にまで上がっていた円高圧力をなんとかしてくれという時の悲鳴は分かります。しかし、それが90円を突破して、100円を突破し、137円になった。わずか10年で7割もの円安になったわけです。

 まともな経済人であれば、通貨の価値が7割も落ちている自分たちの国とは何なのかと。そういう問題意識を強くもたなければいけないのです。

 ―― 要は国力が落ちているということになりますね。

 寺島 円安になれば輸出産業にとってはプラスかもしれませんが、食料やエネルギーなど、多くの資源を輸入に頼る日本にとって円安はプラスとは言えません。すでに今年に入ってから食とエネルギーの価格が4割から6割近く上がっていて、もうアベノミクス幻想から覚めなければなりません。マネーゲームの話は終え、もっと産業と技術の話を真剣に考えるべきです。

 マネーゲームをエンジョイする人たちがいても否定はしませんが、残念ながら経済人から不思議とこういう話が出ない。それが残念でなりません。

続きは本誌で

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