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【円安リスクへの対処法】第一生命経済研究所・熊野英生氏が提言

財界オンライン / 2022年7月31日 11時30分

為替円安の振れが著しい。3月上旬までのドル円レートは、1ドル=116円前後だったのに、それ以降は6月までごく短期間に1ドル=130円台半ばに円安が進んだ。今後、年末までに1ドル=140円台も十分可能性がある。為替レートが140円になれば、原油・食料などの輸入価格はさらに上昇するだろう。このコスト高にどう対処すればよいだろうか。

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 これはひとつの考え方だが、自らがドル資産を持つことがリスクヘッジになる。できれば原材料の年間仕入高に近い規模で保有するとよい。1ドルが135円のときにドルを保有したとき、その後142円になると約5%の為替差益が発生することになる。もう片方で原材料輸入のコスト高で採算悪化になるが、その損失は円安差益によって減殺できるという訳だ。

 こういうと、もしもドル資産を保有して円高に振れると、為替差損を被るではないかと反論されそうだ。しかし、もう一方で原材料の価格が円高になって安くなる。つまり、採算改善のメリットが発生している。為替差損と採算改善のメリットは、互いに打ち消し合うことになる。

 ドル保有で為替リスクをヘッジすることは、将来の時点でメリットとデメリットが相殺されるように手当てすることにほかならない。

 今後、こうしたドル保有のメリットが増えると考えられるのは、ドルの短期金利が2~3%へと高まっていきそうだからだ。米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、6月時点の見通しで2022年末には政策金利を3.4%程度まで引き上げると見通しを示している。これは、ドルの短期資産に3.4%の利回りが付いて、利息収入がより多く見込めることを意味する。ドル安・円高のリスクに対して、この利息収入が為替リスクをいくらか吸収してくれる。

 筆者は、22年11・12月は円とドルとの金利差を狙って、投機筋が同じようにドル保有を増やすと予想している。このとき、円は世界中で調達金利が最も低くなるから、投機筋は円で調達して、その資金をドルで運用するだろう。これを円キャリー取引という。円キャリー取引は、ヘッジファンドなど国際的投機筋の専売特許という印象があるが、日本の個人投資家も、FX取引を通じて同じことが可能である。そうした取引は、円を売ってドルを買うことになるから、自己実現的に円安を進めるだろう。

 筆者は、今後、22年末にかけて、ドル保有によるリスクヘッジで回避する方法をより多くの人が利用することで、より円安が進みやすくなる可能性もあるという点も指摘したい。

 選挙があると、与野党が物価対策をいろいろと打ち出ししてくる。しかし、物価そのものをコントロールすることは甚だしく難しい。だから、企業は自衛策を講じる他はない。ドル保有はその対処法の一つになる。

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