【『田中角栄がいま、首相だったら』著者・田原総一朗氏】「日本という国と、そこで生きる人たちへの『遺書』」
財界オンライン / 2022年7月24日 11時30分
本書は日本という国と、そこで生きる人たちへの僕の遺書─。そう思ってもらっていい。僕は今年の4月で88歳となった。正直、ここまで長生きするとは思っていなかった。自分でも少し驚いている。
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天が時間をくれたのは「何かを皆に伝えておきなさい」ということ。だとするとそれは間違いなく「日本を絶対に戦争をしない国にする」ということだ。ウクライナ問題を見ればよく分かる。最後に泣くのは庶民だ。プーチンにしてもゼレンスキーにしても言葉は勇ましいが、その陰でどれだけの庶民死んでいったことか。
為政者の争いのしわ寄せは必ず弱い者に来る。国の運営は中庸の民の目線でなされなければならない。吉田茂以降の歴代首相のなかで、初めて庶民階級が輩出した田中角栄という人物を登場させたのは、「戦争をしない国づくり」を庶民の視点から論じたかったからだ。
僕は角栄に何度も会った。取材に行くといつも角栄は「おい、メシ食ったか」と聞いた。この言葉には角栄の本質が詰まっている。大切なのは「腹をすかせずに暮らしていけること」。豊かであること。それを角栄は知っていた。
本書では日本を豊かにするための処方箋を示した。まず遷都。これで200兆〜300兆円の経済効果が見込める。商都と首都を分離したうえでシナジー効果を発揮させながら相互に発展し国をけん引させるのだ。
海底資源の開発も重要で、エネルギーの自主開発には角栄も徹底的にこだわった。それが米国の虎の尾を踏みロッキード事件での失脚につながっていくのだが、日本は再び国産油田の開発に挑む必要がある。日本は世界で6番目の海洋国家でもある。そういう意味では大国で、海洋開発なしに日本の発展はない。
本書は頭の体操として皆さんに気軽に手にとって頂きたい。とりわけ防衛費を2倍にするといった貧弱な発想しか持てない日本の今の政治家には読ませたい。
『田中角栄がいま、首相だったら』
田原総一朗、前野雅弥 著
プレジデント社 1,600円+税
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