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食やエネルギーを含む、日本の安全保障をどう確保? 答える人 元農林水産大臣・齋藤健

財界オンライン / 2022年8月5日 7時0分

食料安全保障は自給率だけの問題ではない

 ―― 現在はロシアによるウクライナ侵攻で、食料やエネルギーなどの価格が上昇しています。日本は食料自給率が37%しかないわけですが、「食」の安全保障をどう構築していくべきだと考えますか。

 齋藤 仰るように、カロリーベースでの日本の食料自給率は37%しかありません。しかし、どこから輸入しているかを考えたら、米国、カナダ、豪州、ブラジルの4カ国から輸入しているものを入れると、日本人が必要とするカロリーの約9割がまかなえます。これらの国は政治的に安定して、いずれも日本と友好的な国です。

 これがエネルギーになると、輸入しているのがロシアや中東になってくるので、その不安定性は、食料の比ではありません。そういう意味で言えば、食料よりもエネルギーの方が、大変だと言えるかもしれません。

 一方で、食料自給率が100%になったとしても、生産に必要な肥料が輸入です、ということでは、食料安全保障は確保できません。

 ―― なるほど。食料を耕すための肥料。

 齋藤 ええ。ですから、食料安全保障というのはカロリーだけではなく、肥料をどこから入れているのかも重要になってくるんですね。

 例えば、リン安は中国から約9割、尿素は中国から約4割でマレーシアから約5割、塩化カリはロシアとベラルーシから約4分の1を輸入しています。この3つが三大化学肥料なんですが、そう考えると、カロリーベースの自給率を考えることは大事ですけど、更にこういう部分まで目配りしないといけない。

 今まではどちらかというとカロリーだけに注目しがちだっただけに、もっと広く日本の食料安全保障を考えていかなければならないと思います。

日本の食料安全保障はどうなる? 答える人 キヤノングローバル戦略研究所・研究主幹 山下一仁




ロシア同様に中国が台湾を電撃侵攻したらどうなるか

 ―― そう考えると、中国との関係は大事ですね。

 齋藤 それは大事です。わたしは、今回のロシアによるウクライナ侵略は、日中関係を考える際にも、極めて重要な問題だと考えています。遠くのヨーロッパで大変なことが起こりましたね、で済まされる問題ではない。

 懸念されるのは台湾への跳ね返りです。当初、露プーチン大統領が目論んでいたことは、ウクライナの首都キーウを電撃侵攻して、ゼレンスキー大統領を失脚させ、ウクライナ全体を掌握することでした。ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟するなんてとんでもないと。ところが、当初の目論見が外れたので、東部の制圧に切り換えたわけですね。

 中国による台湾侵攻のシナリオはいくつか考えられますが、一つの有力なシナリオが電撃侵攻なんです。中国が台湾の総統府を制圧した後で「これは中国の国内問題です」と言われたら、どうなるか。日本も米国も”一つの中国”を尊重すると言ってきているんですよ。

 ―― 中国は、本当に台湾に手を出すのでしょうか。

 齋藤 今回、プーチン大統領が考えていたことは、中国の習近平国家主席が考えているであろうことと共通性があるんです。

 昨年7月に中国共産党の創立100年周年式典が行われた時に、習近平国家主席は台湾を統一するという趣旨の発言を行っています。わたしは中国は本気だと思います。

元防衛大臣・森本敏「日本の課題は国家と国民の主体性と自主性を取り戻すこと」

 そして、一つのシナリオとして、電撃侵攻というものがあるのであれば、それは今、ウクライナで行われているではないか。このことを日本人も念頭に入れておくべきです。

 かつてウクライナはソ連の一部でしたが、実は、9世紀から13世紀にかけて、現在のロシアとベラルーシ、ウクライナの地域は、キエフ大公国という一つの国でした。しかも、当時ヨーロッパ最大の。

 ―― かつてウクライナとロシアは一体だったと。

 齋藤 そうです。なので、プーチン大統領から見れば、冷戦に敗れることによってウクライナが奪われた、という感覚があってもおかしくない。

 実は中国にとっての台湾も同じです。習近平国家主席から見ると、もともと同じ国だったが、日清戦争に敗れて奪われたのが台湾なんです。こうしてみてくると、ロシアとウクライナの関係は、中国と台湾の関係に似ている。だからこそ、ウクライナ問題は明日の台湾問題かもしれないと言ってもいいのではないかと思います。

続きは本誌で

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