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デジタル社会を支える【海底ケーブル】 NTT・三井物産 新事業会社の役割とは何か?

財界オンライン / 2022年8月12日 18時0分

海底ケーブルはデジタル経済圏を支える基幹インフラだ(写真はNTTの提供)

通信速度や容量で海底ケーブルは優位性がある

「今は世界的にデータ・トラフィック(通信量)の需要が旺盛で、アジアと米国、太平洋間を結ぶ需要は年率30~40%の伸びがある。それに対し、通信事業者としてその需要を賄い、事業を発展させたいという思いがある。今回、太平洋にこういうシステムを持つことは、米国とアジアの中間に位置する日本をハブにして、アジアに展開するという意味で、重要な太平洋の基盤になる」

 こう語るのは、NTTリミテッドVice Presidentの佐藤吉雄氏。

 NTTグループと三井物産が、日本と米国をつなぐ太平洋横断海底通信ケーブルを運営する新事業会社を設立する。米西海岸のカリフォルニアから日本の千葉県と三重県とをつなぎ、総延長距離は約1万㌔㍍。ケーブルの総通信容量は350テラ(テラは1兆)ビットで、日米間を結ぶ海底ケーブルとして最大の通信容量となる。

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 新会社「セレンジュノネットワーク」は、NTTグループと三井物産が約37・5%ずつ、JA三井リースが約25%を出資。前述の佐藤氏は同社の社長に就任。2024年末までの運用開始を目指しており、総事業費4・5億㌦(約620億円)を見込む。

「NTTの海底ケーブルの歴史は24年前から始まった。今まで海底ケーブルを敷設する時は通信キャリアでコンソーシアムを組むことが多かったが、今回は他のキャリアとは組まず、単独で太平洋横断ケーブルをつくるんだと。NTTは国際的には新参者なので、グローバルなノウハウを持つ三井物産の力をお借りしながら、新しい形でグローバルに挑戦していく」(佐藤氏)

 現在はスマートフォンやあらゆるものがインターネットにつながるIoTの普及など、世界的な通信需要の増加で、海底ケーブルの市場が拡大している。インターネットなどの国際通信の約99%は海底ケーブルを経由しており、一般的にイメージするような通信衛星を介した国際通信はほとんどない。

 今回のケースを考えると、海底ケーブルであれば、米西海岸から日本を直線距離で結ぶと約8千㌔㍍。これが衛星通信になると、地上から衛星まで片道約3万6千㌔㍍。往復で約7万2千㌔㍍離れることになり、通信速度や容量で海底ケーブルに優位性がある。

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自らリスクをとって市場を開拓する時代に

 海底ケーブルの敷設は、国家のデジタル戦略や経済安全保障政策とも密接に絡む。

 今回のNTT同様、米グーグルやフェイスブック(現メタ)も自ら海底ケーブルの敷設に乗り出している他、中国やロシアも強化。中国政府は巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて途上国への敷設を後押ししている。

 こうした流れを受け、グーグルやメタはロサンゼルスと香港を結ぶ海底ケーブルを敷設中だったが、2020年に米司法省がストップ。この海底ケーブルを経由した通信データが中国政府に抜き取られることを懸念したためだと言われている。米中覇権争いは海底ケーブルの世界でも行われているのだ。

 そうした中、岸田文雄首相は昨年12月の所信表明演説で、「デジタル田園都市国家」構想を表明。海底ケーブルで日本を周回する「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」を3年程度で完成させるとしている。こうした政策が実現されれば、補助金の話にもなり、今後は参入する事業者も増えてくるだろう。

「かつて国際電話が主流の時は国が主導して通信インフラをつくる時代だったが、今は世の中が電話というよりインターネットの時代になってきている。さらにクラウドやデータセンターという、電話とはかけ離れた分野が伸びている中で、通信会社としてやるべきことがまだまだあると。今は自由競争の中で、民間が自らリスクをとって市場を開拓していくことが求められているのではないか」と語る佐藤氏。

 普段は決して目にすることのない海底ケーブルだが、もはや社会に欠かせない大事なインフラ。日本の経済安全保障や官民それぞれの役割が問われる中で、NTTの新たな挑戦が始まっている。

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