【倉本聰:富良野風話】牛のゲップ
財界オンライン / 2022年8月27日 11時30分
尾籠な話で恐縮なのだが、僕の周辺に40過ぎてから、やたらオナラが出るようになって秘かに悩んでいる元美女がいる。本人、相当に悩んでいるのだが、何かのはずみで括約筋(かつやくきん)がゆるんでしまったのか、日常生活の中にあっても何故かプップッと音が出てしまう。この方の悩みを解消してやれないかと、当節流行りのSDGsを考えているうちに、物凄い資料にぶち当たってしまった。
【倉本聰:富良野風話】ポツンとひとり
人類が1日に出すオナラの量は0.002499リットル。この中に含まれるメタンを発電に使うと約202世帯の年間電気量に相当するという。それに対して牛のオナラ1日では360億リットル、2万6506世帯の年間電気量を賄えるという。更にこれが牛のゲップになると、1日118兆2600億リットルで、871万世帯の年間電気量を賄えてしまうという。人間のオナラの7000倍である。美女が恥じらうことなどない。
豚もメタンを放出はするが、牛の場合は胃が4ケあるために、この排出量が異常に高くなるわけである。
ちなみに、工業型畜産が排出する温室効果ガスは、全温室効果ガスの18%を占めているとのことで、そのうち78%は、牛のゲップが出しているというから驚く。しかもこの量は、運輸関係すべての乗物から排出される温室効果ガスの排気量に匹敵するという。
アマゾン等を伐採して行われる工業型畜産が、多くの問題を起こしていることは知っていた。森林伐採、温室効果ガス、水、穀物の大量使用、抗生物質やホルモン剤の過剰使用、地球上の陸地の4分の1の土地利用、人獣共通感染症の発症、土壌劣化、水質汚染など、様々な問題を引き起こしている。
ハンバーガー1ケを作るのに、トイレ6ケ月分の水を使うとも言われ、1キログラムのステーキを作るのに、約1万5000リットルの水を使うともいわれている。
だが、牛のゲップがこれ程までに地球温室効果ガスを排出しているとは知らなかった。
昨今起こる異常熱波、線状降水帯の発生と洪水。あれらが昨夜焼き肉屋で喰べた牛たちの恨みのゲップに因していたとは!
一方最初に記したように、牛のゲップが含むメタンの量は、これを発電に利用するなら118兆2600億リットル。871万世帯の年間電気量となるという。現在、地球上の人口ならぬ牛口の数値は15億2593万9000頭に上るというから物凄い。
こんなデータに文系の僕が何故か偶然辿りついてしまったのは、近くにいる一美女の、オナラについての思考からである。
スマホ1つ扱えぬ僕のような愚者でも、こんな思考に辿りつくのに、世に数多いる理系の賢者はどうしてこういうことを研究しないのだろう。ドローンや殺人兵器を考える方が、金になるからそっちへ思考が走るのだろうか。牛のゲップの収集器を発明してくれる方が余程世のため人のためになるのに。
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