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【電力問題】ニッセイ基礎研究所・矢嶋康次氏が直言「我慢ではなく供給力アップの実現が政治に求められる」

財界オンライン / 2022年9月4日 11時30分

今年の冬は、夏よりも一層深刻な電力危機を迎えそうだ。

 資源エネルギー庁が7月20日に公表した電力需給見通しによると、最も逼迫が予想される東京で、この夏の電力予備率が最低限必要な3%の予備率に迫り、1月にはそれを下回る1.5%まで低下するとの予想がある。夏の需給は、火力発電所の再稼働や全国的な節電要請によって、幾分改善したとはいえ、何か事故などが生じてしまったら、危機に陥りやすい綱渡りの状態が続く。

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 岸田首相は7月14日に、再稼働できる原発のうち、最大9基を冬までに動かすとしたが、冬季の電力計画は、うち8基の稼働が前提になっている。原発以外にできることをしないと、電力需給は改善されない。

 ロシアのウクライナ侵略から資源の争奪戦が始まった。グローバル経済が成立していれば、安いところから資源を調達することが可能だ。しかし、新冷戦とも言われる分断された世界では、いくら高い値段を支払うと言っても、買える保証はない。エネルギーや食糧などの自給率が低い日本は、その課題に早く直面する。

 日本は、利用可能なすべてのオプションを、総動員する必要がある。

 なんといっても節電。できる限り長期のLNG契約を結び、サハリンからの供給不安を減じる。さらに、電力の安定供給を確保するため、石油・石炭火力について、遊休設備や自家発電などの活用と、安定運転のための準備を進めなければならない。速やかに原発9基の再稼働を実施し、残りの原発の再稼働や、小型原子力の開発などにも力を入れないといけない。総力戦で臨まなければ、この危機を乗り越えることはできない。

 でもいま必要なのは、利用可能なオプションを並べるのではなく、決め切って行動すること。動き出して前提が変わったら、その都度変えていく。最善だと思う行動を取るしかない。

 エネルギーがなく電気もないでは、デジタル化も起こらない。暑い夏で経験しているが、クーラーを使わないと、健康問題にも直結する。暖房が使えないと、冬も同じことが起きる。

 ドイツでは、足元の電力確保のため、これまでの方針を転換して、石炭火力に国として頼ることを決め切った。2030年に石炭火力発電を廃止するという目標は維持しつつも柔軟性を発揮する。方針が決まれば、民間はそれに沿った活動や投資が可能になる。金融機関などもESGとの関係で難しかった石炭火力について、期間を区切った形で更新や修理などに投資することが是とされる。

 一方の日本は、野心的とされた第6次エネルギー基本計画が、足元と大きく乖離したまま今回の危機に突入している。

 電力は経済だけでなく生活の基盤。当然足りなくならないよう国民は我慢するが経済は縮む。国がやるべきは、何としても供給力を確保するため、いま動き出すことである。

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