【追悼】京セラ創業者・稲盛和夫さんを偲ぶ
財界オンライン / 2022年9月10日 11時30分
『自利利他』の精神で
「才能に乏しくても熱意があれば人に負けないはずだ」――。
京セラ創業者の稲盛和夫さんは90年の生涯を通して、この思いを実践し続けた。
『考え方×熱意×能力』という人生哲学の実践である。
2022年(令和4年)8月24日、90歳の生涯を逝去した稲盛氏の生き方は、先行き不透明で混沌とした世界情勢にあって、わたしたちに大事なことを訴えかけてくる。
1932年(昭和7年)1月鹿児島出まれ。27歳で京セラを創業、一代で同社を世界的な電子部品メーカーに育て上げた。
その後、52歳で第二電電(現KDDI)を創業して、日本の通信自由化時代を切り拓いた。そして、リーマンショック後の2010年に日本航空(JAL)が経営破綻した折、その再生を任されて同社会長に就任。この時、78歳の高齢であった。
京セラやKDDIを日本を代表する企業に育て上げ、さらには京都商工会議所会頭などの公職を務めあげた稲盛さん。
同氏周辺では「晩節を汚す」ということで、JAL会長就任に反対の声も根強かった。そうした声を押し切ってでも、稲盛さんをJAL再生に向かわせたものとは何だったのか。
稲盛さんがJAL再生を引き受けた理由はただ一つ。「日本航空は日本を代表するエアライン。その再生には3万数千人(当時)の社員の雇用がかかっている」ということだった。
一言で言えば、「世のため、人のため」という稲盛さんの思い。
郷土の偉人・西郷隆盛を小さい時から尊敬し、その『敬天愛人』の思想に触れてきたという生き様。自らの名誉や地位にこだわるより、常に「公のために」という生き方であった。
その人生観、世界観の根本をなすのは、仏教から来る『自利利他』という考え。自らを生かした「公」に貢献するという生き方である。
稲盛さんは苦境や危機にあって、「リーダーは言い訳せず、自らの目標を完遂する強い意志を」と説き続け、実践し続けた。そして、次代を担う若者たちには『君の思いは必ず実現する』(財界研究所刊・2004年、現在16刷)という言葉を遺した。
コロナ禍が2年半続き、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって半年、また、世界中で政争、内紛が続く。いかなる危機にもひるむことなく、「正しいと思うことを日々実践していく」という生き方から、わたしたちが学ぶことは多い。
合掌
追悼・出井伸之さん(元ソニー会長)
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