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元防衛大臣・森本敏 ウクライナ戦争が極東に波及する要因(その1)

財界オンライン / 2022年9月6日 18時0分

ウクライナ戦争におけるロシアの真意

 2月24日に始まったロシア・ウクライナ戦争はすでに6カ月が経った。第一段階作戦はロシアが劣勢に終わり、第二段階はロシアがやや挽回した。この間、ロシア・ウクライナ双方は戦力・兵員を消耗し戦場は荒廃することとなった。現在は戦闘態勢の立て直しを図り、第三段階の作戦計画に基づき戦闘を開始し始めたところである。

 第三段階はドネツク州西部とヘルソン・ザポリージャなど南部の二正面作戦になり、これは年末までかかるとしても最終決戦となるであろう。依然として、ウクライナ側は武器弾薬の不足、ロシア側は兵員と兵器生産の充足に苦しんでいる。いずれにしても使用兵器の質・量が勝敗のカギを握ることになろう。

 ロシア・ウクライナ戦争におけるロシアの真意はウクライナの部分占領だけではない。この戦争を通じてロシアが西側世界に勝利して米国と欧州諸国との分断(デカップリング)を図りロシア中心の新たな欧州秩序を確立することであろう。

 しかし、戦闘の実態を見ると、このところ西側が進めてきた経済制裁の効果が表れてきたようであり、ロシアへの先端技術を使う製造業と高品質商品の輸入が停滞している。ロシア国民のあからさまな不満は聞こえてこないが、ルーブルの価値も低下し、政府の方は焦っているように見える。

 このため、ロシアは西側の経済制裁に対して盛んに報復措置に出ている。ドイツをはじめEU(欧州連合)諸国への天然ガス供給を削減する一方で、中東諸国に働きかけて原油をわずかな増産にとどめて石油価格の高止まりを維持し、国家の歳入を稼いでいる。

 中国・インドなどには大量の石油を安く売って外貨を手に入れ制裁逃れをしている。また、ウクライナの穀物輸出を妨害していたが、食糧難にある途上国を味方にすることは難しく、国際社会の非難も大きいので、若干の小麦を輸出できるように振舞っている。フィンランドやリトアニアへの嫌がらせと威嚇も悪質である。

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 しかも、ロシアだけでこの戦争に勝利することは無理だということも分かっているようで、中国の協力を求めている。米国も欧州の脅威であるロシアと、インド太平洋の脅威である中国の双方に同時に対応するだけの力は持ち合わせていない。

 西側同盟国の協力がなければやっていけないし、米国だけでウクライナ戦争を勝利に導くだけの力もない。結局、米ロ双方にとって中国の対応が大きな要素になっている。

 その中国はウクライナ侵攻が始まった直後はロシアと少し距離を置いていた。中国は途上国の対応も気にして、ロシアの非人道的行為を批判したこともある。米国は中国に対し、ロシアへの武器弾薬などの支援をした場合には西側は制裁を科すと威嚇していた。

 中国としても、日米欧から経済制裁を受ければ経済成長は鈍化し、中国共産党大会もあるので、国内政治上の問題からロシアへの支援は控えめにしてきた。

 こうした中国の対応が大きく変化したのは、6月末のG7(主要7カ国)サミットとNATO(北大西洋条約機構)首脳会議における西側の団結と連帯である。

 中国は、日米欧がロシアと中国への脅威認識を共有する明確な戦略に出てきたことを察知して、ロシアがウクライナ戦争に勝利しなければ、台湾統一は難しくなるので西側の団結と協調を分断して、ロシアを優位な状態にすることが、中国がインド太平洋において台湾攻略を容易にすると考えたのであろう。

「デジタルの世界には信号機が無い」東京財団政策研究所主席研究員・柯 隆

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