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元防衛大臣・森本敏 ウクライナ戦争が極東に波及する要因(その2)

財界オンライン / 2022年9月9日 18時0分

中国の軍事的な動きが急速に進んでいる

 極東の安全保障環境を見ると、ウクライナ侵攻以来、極めて深刻な状態が生起しつつある。特に、中国の軍事的な動きが急速に進んでいる。3隻目の空母は進水したが実戦に使うにはまだ時間がかかる。しかし、各種艦艇の建造は進み、第五世代戦闘機も増産されつつある。無人機やRORO船(貨物専用フェリー)も多くなりつつある。

何よりも台湾方面での軍事活動が急速に活発化しており、今や台湾のADIZ(防空識別圏)を無視して領空侵犯活動が広がり、台湾周辺海域での弾道ミサイル発射も行っている。ロシアがウクライナ侵攻を始める前にウクライナとロシア国境の周辺で行ってきた軍事活動と同じ様相がみられる。

 台湾攻略を実行する場合に中国軍が進める重要な軍事活動には、①台湾国内へのハイブリッド戦闘(情報戦・サイバー戦・宇宙衛星活動や不法工作・世論工作など)、②台湾周辺の海上輸送路の封鎖(友好国からの武器弾薬補給を阻止するため南シナ海・東沙諸島・澎湖諸島やバシー海峡周辺の通峡阻止)、③台湾海峡渡海の準備態勢(多数の船舶と台湾海峡周辺の制海権・制空権確保)、④日米の防衛力への陽動作戦や政治外交工作、が含まれる。日本にとって警戒すべき活動は多く、特に、台湾周辺でのミサイル発射訓練は実戦においてもあり得るので日本のEEZ(排他的経済水域)内に向けた発射は深刻である。

 また、空母部隊が今後、日本の南部海域方面から本格的な作戦活動を行う時の日本の対応準備は不十分であり、この面では警戒を要する。さらに警戒を要する活動は陽動作戦である。最近、尖閣諸島周辺の接続水域内に中国とロシアの艦艇が同時に侵入した事例がある。また、北朝鮮が今までになく多数の弾道ミサイルや極超音速ミサイルの発射を行っているだけでなく、近く、7回目の核実験を実行する兆候が見られる。あからさまな対米挑発活動であるが、それだけにとどまらない。

 さらに深刻な問題は極東ロシア軍の動きであり、中国との軍事協力協定に基づく共同活動が盛んになっていることである。8月から9月にかけて極東方面の北方領土周辺でのロシア軍の共同演習(中国も一部参加)は今までの演習とは性格が異なり、日本の北方からの軍事行動をロシアが本気で模索している兆候が見える。

 また、中ロの共同軍事行動や北朝鮮の軍事的挑発に対して日米両国が本格的な対応をすることを予想して、台湾海峡付近における「力の空白」状態を作って台湾攻略に対する阻害要因を除去しようとする作戦である可能性もある。

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