【経済産業省】「サハリン2」交渉は越年へ 三井物産と三菱商事が新会社参画
財界オンライン / 2022年9月25日 11時30分
ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」をめぐり、ロシア政府は三井物産と三菱商事の商社2社に対し、事業を引き継いだ新会社への参画を承認した。政府は「わが国のエネルギー安定供給の観点から重要な意義がある」(西村康稔経済産業相)と歓迎するが、液化天然ガス(LNG)の安定調達に向け、安心できる状況ではない。新会社の運営ルールを定める株主間協定の交渉は越年が予想され、ロシア側から不利な条件を突き付けられる恐れがあるからだ。
三井物産と三菱商事の新会社への出資比率は旧会社と同じで、それぞれ12・5%、10%となる。一方、英石油大手シェルは事業撤退し、その出資分(約27%)は4カ月以内にロシア企業に売却される。筆頭株主のロシア国営天然ガス独占企業ガスプロムの出資分(約50%)と合わせ、ロシア側の出資比率は約8割に達し、商社2社の影響力の低下が懸念される。
商社2社とガスプロムなどとの株主間協定の交渉は、新たな株主構成が決まった後に始まる。政府関係者は「交渉の越年は必至だろう。ロシア側がどのような無理難題を突き付けてくるか、予断は許さない」と警戒。販売先や価格など、重要な契約事項が変更されないか注視する必要があるとしている。
日本はサハリン2からLNGの年間輸入量の約8%に当たる600万トンを調達する。旧会社とLNGの長期購入契約を結んでいたJERAや九州電力、東京ガス、広島ガスなどは新会社との契約を更新。いずれも調達量や価格などの条件は旧会社との契約内容から変更はないという。商社2社の参画承認には「ロシアとの取引はリスクが高いので、これまで通り商社2社が間に入ってくれるのは有難い」(関係者)との声が上がる。
ただ、ロシアは経済制裁への対抗措置として、欧州向けのガス供給を絞っており、日本にも同様の揺さぶりを掛けてくる恐れもある。LNG調達の途絶リスクはなお残ったままだ。
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