「世界で支持されるスーパーブランド目指して」 ミキハウス社長・木村皓一
財界オンライン / 2022年10月7日 18時0分
グローバルスタッフの約半数が正社員
─ コロナ禍の長期化に加え、ロシアによるウクライナ侵攻も早7カ月が経ちました。まずは、コロナ禍の2年半をどのように受け止めていますか。
木村 当社はもともと百貨店中心の事業を行っていて、コロナ前はインバウンド(訪日観光客)需要の比重がそれなりに大きくなっていました。東京都内や大阪、名古屋あたりのお店では3割くらい、都心部では5割くらいがインバウンド需要という店もありました。
その売上がコロナで一気に消え去ったわけですが、海外のお客様のニーズは根強く、日本に住んでいる海外国籍の方が、自国の知り合いに代理購買を頼まれるようになりました。また、インターネット通販を利用して海外のお客様が商品を買ってくれました。
─ 海外からの注文にも対応できるスタッフがいたと。
木村 当社には外国人スタッフも多いですからね。全スタッフが約1200人で、そのうちグローバルスタッフは約100人。約半数が正社員です。日本人だけの会社では、注文が来ても対応できないから、なくなく断っていたでしょうね。
─ 近年は優秀な外国人スタッフが育っているということですが、どなたか印象的なスタッフはいますか。
木村 皆さん印象的ですけど、例えば、韓国出身の朱愈蘭さんは、日本への留学経験があり、日本語はもちろん、英語、中国語も堪能。社内での中国語研修の講師としても活躍していて、現在は、今後の韓国でのビジネス発展に向けて、高麗大学でMBA(経営学修士)を取得中です。
また、中国で現地法人をつくったのが、成都出身の張勝寒さんと内モンゴル出身の安揚さん。共に東京大学大学院時代からの仲間で、揃って入社。日本国内の店舗やEC(ネット通販)部門の勤務を経て、2020年末に成都で現地法人を設立。2021年夏には中国国内でミキハウスのECサイトを立ち上げました。
他にもタイやインドネシア、ベトナム、パキスタン、イタリア、ウクライナなどから入社してきた社員がいて、グローバルなブランドビジネスに関心が高く、日本と自国との懸け橋になることを志向しているスタッフが多いですね。
─ 心強いスタッフが続々育っているんですね。
木村 そうなんです。ですから、インバウンド需要が年間70億円くらいあったのがコロナ禍で消えましたが、半分近い35億円くらいはこうしたスタッフが対応した海外からの需要に助けられました。
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─ 残りの35億円はどうやってカバーしたのですか。
木村 それは日本の需要の掘り起こしです。われわれは最近、国内のマーケティング活動の重要施策の一つとして、全国の産婦人科、いわゆる、産院との取り組みを強化しています。
うちのHPでは、妊娠やら出産に関する情報を発信していまして、マタニティの方からの質問に専門家が答えてくれているんですが、日本の産婦人科医の第一人者で、慶應大学名誉教授の吉村泰典先生にもずっとお世話になっています。
最近では吉村先生が紹介してくれた産院さんも含めて、全国の産院さんとの取り組みが色々スタートしています。
もともとうちでは作っている商品の説明だけではなく、妊娠や出産を通して生活がどのように変化して、どんなことに気を付ければいいかなど、「子育てをする生活」についてのご案内を、店頭だけでなくWEBや社外のセミナーなんかでもずっと発信してきました。
コロナ禍では、オンラインでセミナーなんかもやっていましたからね。そういった活動が産婦人科さんという場所でもお役に立っているようです。
最近では、産婦人科で退院されるお母さんに、産院さんからの退院のプレゼントをお渡しになるんですが、そのプレゼントBOXをうちで用意させていただいているのが好評です。
─ どれくらい用意するのですか。
木村 この秋には全国で年間4万人近くまでお渡しする数が増えてきています。目標として、全国の産婦人科さん100院、年間7~8万人の妊婦さんやお母さんと接点を持てたらいいなと思っています。
うちとしては赤ちゃんがオギャーと産まれた時から、ミキハウスのこだわりの肌着に触れてもらうと。お子さんにとっては肌触りが良くて、お母さんにとっても何回着ても色落ちしないし、ほつれたりしないから使いやすい。お下がりになってもまだまだ使えますしね(笑)。親御さんも含めて、産まれた時からミキハウスのファンになってくれると嬉しいですね。
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─ ミキハウスの商品は子供服がメインですが、ゼロ歳児からミキハウスのファンにしようと(笑)。
木村 そうです。これはまさにベビー分野を強化しようということなんです。
なぜ、ベビー分野かといったら、みんな最初は妊娠出産の素人で、的確なアドバイスを求めているからです。今は核家族化や地縁や共同体の繋がりが薄くなっているので、相談できる人が近くにいないんですよね。逆にWEBの情報は多すぎて何が正しいか分かりませんし、そんな中で、ミキハウスが安心安全の情報発信をすることが求められていると思っています。
ベビー用品から子供服、寝具、遊び道具まで、世界中の会社の中で、当社が一番商品ラインナップも揃っているし、最高の品質だと自信を持っていますので、ミキハウスのファン層を生まれてすぐのところから増やしていきたいと考えています。
─ そう考えると、少子化や人口減少時代に入っても、まだまだ国内市場の掘り起こしは可能だということですね。
木村 もちろん、急成長するのは無理ですよ。しかし、頭をひねれば、やれることはあるだろうということです。
やはり、長期的な視点でみれば、国内はこれから少子化がどんどん進んでいきます。1971年(昭和46年)に創業した時は年間265万人の子供が産まれていて、現在は80数万人ぐらいですよね。当時の3分の1くらいになっているのですから、国内だけに固執していては大きな成長はできません。
だから、国内でもインバウンドが戻って来れば、インバウンド需要を取りに行きますし、これから経済成長が続くアジアを中心に、海外の市場を狙うというのが基本的な考えです。確かに中国は今後も巨大な市場であり続けますが、コロナ禍で表面化したようにカントリーリスクも大きいです。人口が増え続けるベトナム、インドネシア、フィリピン、そしてインドから中東にかけてのエリアで認知度を上げながら、次世代のファンを育てたいと思っています。
ちょうど先日、シンガポールの高級リゾートホテル、マリーナベイサンズのショッピングモールからの出店依頼があり、12月の直営店オープンが決まったところです。海外籍のスタッフだけでなく、日本の若手スタッフも一緒になって立ち上げようとしていまして、社内にもいい刺激になっていると思います。
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