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 【社名変更】 AZーCOM丸和ホールディングス・和佐見勝社長「3つの物流事業を基軸に次なる成長へ」

財界オンライン / 2022年10月12日 18時0分

和佐見 勝・AZーCOM丸和ホールディングス社長 (丸和運輸機関社長)

「M&A戦略で今後の成長を。3PLの
強みを駆使して売上高1兆円を目指す」

 「グループ入りした企業も丸和運輸機関と同じ仲間。横並びの関係になります」─。10月1日付で純粋持ち株会社のAZ―COM丸和ホールディングスとして新たな出発をした社長の和佐見勝氏はこう語る。
 1970年にトラック1台で創業して五十余年。日本でも冠たる3PL企業(企業の物流業務を一括請負)へと進化した。和佐見氏が見据える次のステージは2040年の売上高1兆円の実現。社名変更を機に同社はどのような成長戦略を描くのか?

新社名に込めた思い  ─ 10月1日付で社名を「AZ―COM丸和ホールディングス(HD)」にしましたね。この狙いから聞かせてください。

 和佐見 まずは環境変化に対応できる経営体制づくりが求められていることが背景にあります。これまで丸和運輸機関は「EC(電子商取引)物流」「低温食品物流」「医薬・医療物流」の3つのドメインを基軸に成長してきました。しかし、今後の更なる成長を見据えた場合、M&Aも有力な選択肢になります。

 私が1970年にトラック1台で創業してから五十余年が経ち、当社グループの事業規模も2022年3月期売上高で1300億円を超え、23年3月期では1715億円を見込むほどになり、中期経営計画3年目の25年3月期には売上高2400億円、経常利益175億円の計画です。では次の50年、100年に向けてどう挑むか。

 当社は40年に売上高1兆円を目標としています。これを実現するためにはM&Aを戦略的に展開していく必要があります。その場合に事業会社である丸和運輸機関のグループに入れるのはなかなか難しいと。中小企業にとっては「丸和に飲み込まれるのではないか」と身構えるケースもあり得ますからね。

 今後の成長は自助努力に加えてM&Aによって拡大していきますが、丸和運輸機関の下でM&Aを展開していくのではなく、持ち株会社があって、その下に丸和運輸機関と横並びで参加していただき、グループづくりを展開してきたいと。

 ─ M&Aの中身はどのようなものになっていきますか。

 和佐見 先ほど申し上げた3つのドメインのうち、近年はEC物流を中心としたM&Aを展開してきました。今後はEC物流はもちろん、低温食品物流などにも携わっている企業へのアプローチを図る考えです。そして、日本全国に低温食品物流のコールド・チェーンを構築していきたいと思っています。

 グループに入っていただいた企業には当社の経営改善のノウハウを提供し、我々と一緒になって業績の拡大を図っていただきたいと。売り上げと利益は基本的には2桁成長を図ってもらいたいですし、利益率も物流分野では7~8%を確保していただきたい。そういった収益管理について徹底的にご指導する考えです。

 ─ そこで純粋持ち株会社を新たに設置するわけですね。

 和佐見 そうです。丸和運輸機関もAZ―COM丸和HDの一員です。ですから、M&Aでグループ入りした企業とは対等な関係になります。要は同じ仲間であることを示すと。これは私が設立した運送事業者のネットワーク「AZ―COM丸和・支援ネットワーク(AZ―COMネット)」とも関係があります。

 AZ―COMネットに加入しているのは中小運送業者。人手不足や燃料・運送費の高騰の中で、ネットワークを組むことで規模が大きくなり、バイイング・パワー(購買力)が強化されます。規模を生かして車両や燃料の購入コストを抑えることができるわけです。したがって、このAZ―COMネットの会員企業はまさに仲間なのです。


「2024年問題」にも対応  ─ だから新社名では「AZ―COM」が「丸和」より先に来ているのですね。

 和佐見 ええ。そして今後成長するためにはそれなりの資金が必要です。そこで金融機関との交渉は持ち株会社が行います。ですから、持ち株会社は思い切ったことを実行していくための組織となります。40年までに売上高1兆円を実現するためには、やはりスピード感を早めなければなりません。

 ─ そして物流業界では働き方改革が求められています。どう対応していく考えですか。

 和佐見 物流業界では「2024年問題」と言われていますが、ドライバーの年間時間外労働時間が24年から上限960時間に規制されます。物流業界はお客様のデリバリー(配送)が基本です。ですから、これまでは我々の方で時間の調整はできませんでした。しかし、働き方改革は全産業共通の方針ですから、全産業で対応しなければなりません。

 ─ 具体的にどのような対応策を講じていきますか。

 和佐見 デジタルトランスフォーメーション(DX)です。具体的にはスマート物流におけるDXの一環として、「AZ―COMポケット」というアプリを利用し、現場の配送業務の効率化や標準化を支援していきます。
 このアプリにはAI(人工知能)を駆使してドライバーの現在位置や稼働状況をリアルタイムに把握する動態管理機能や集荷配送先の情報を運行管理者とドライバーが共有する集荷配送先カルテ登録機能、そしてトラック対応カーナビ機能などを搭載しています。

 準備を進めて約1年間、日本のDXの第一人者のご指導をいただきながら開発に漕ぎつけました。丸和運輸機関でも配車システムや動態管理のシステムはあったのですが、24年問題への対応も見据えて、この商品を開発しました。23年4月から本格導入する予定です。

 ─ ドライバー専用のアプリということになると。

 和佐見 はい。ビジネス用で輸配送業者専門のアプリになります。そしてこのアプリはAZ―COMネットの会員企業に導入していただきたいと考えています。ですから私はできるだけ安価にしなさいと。他にも似たような商品はありますが、AZ―COMポケットはそれよりも格段に安く、価値あるものにします。

 ─ 採算は取れるのですか。

 和佐見 いえ、難しいです。しかし、将来を考えれば、これがAZ―COMネットのパワーになります。というのも、このアプリを導入すれば生産性向上につながるからです。例えば、トラック対応カーナビ機能ではトラックの車両サイズを考慮したルート案内が可能です。

 また、最寄りの休憩地点をワンタップで検索することもできます。トラックでも駐車可能なコンビニエンスストアを探し出すこともできます。ドライバーにとっては必要なものを素早く検索できる機能になるわけです。こういった機能は他のアプリにはあまりないと思います。

 ─ 管理者に対する機能もあるのですね。

 和佐見 更新作業をすることなく、ドライバーの現在位置をリアルタイムに把握することができますから、誰がどこにいるかが事務所にいても一目で分かるようになっています。また、従来まで紙に記載・保管し、ドライバーにその都度印刷して説明していた集荷配送先のカルテもデジタル化されています。

 これは幹線輸送向けと宅配向けの2つを用意しています。現場に着いたら、どのような手順で集配送の作業をするとスムーズになるかが一目で分かるようになっているのです。これまでは丸和運輸機関でいろいろなサービスを提供してきましたが、このアプリを活用することで、それを上回ったきめ細かなサービスをもっと幅広く展開できると考えています。

埼玉に低温食品物流のモデル  ─ 安価に提供する分、当面は自己負担が続くのですね。

 和佐見 私がいつも考えていることはAZ―COMネットの会員にこういった最先端の技術を駆使して企業経営を成功していただきたいということです。会員がご苦労をして当社に利益をもたらすというビジネスはやりません。「陽徳」と「陰徳」と言われますが、当社は人から感謝される「陽徳」より、誰にも褒められないかもしれないけど人知れず行う「陰徳」で成長していく企業なのです。

 ─ 会社の成長に合わせて人財育成も重要になります。

 和佐見 その通りです。グループに参加した企業の社員の方々については、当社が責任を持って成長をサポートします。当社と縁を持ったことで自身と企業の成長を実感していただけなければ意味がありませんからね。最初は社内大学の「丸和ロジスティクス大学」などを通じて階層別の教育を定期的に開催し、人を育てていきます。

 ─ 一方で成長戦略の1つである海外はどう攻めますか。

 和佐見 こちらもM&Aが大事になってくると考えています。その際は低温食品物流のコールド・チェーンを中心とした展開を図っていきたい。日本の温度管理は世界でもトップレベルです。そのノウハウを持って人口増加が続くアジアを中心に展開していこうと考えています。

 そこで今後の海外展開の要になるのが東埼玉エリアの松伏町に建設予定の大型物流センターです。日本で最大級の低温食品を専用としたコールド・チェーンの物流センターを計画しています。ここではDXの推進とAI、IoT、フィジカルインターネット(複数の企業が所有する施設や設備をシェアして効率良く物資の輸送を行おうとする物流の新しいコンセプト)といったデジタル技術を活用していく予定です。

 ここをコールド・チェーンのモデルにして海外の皆さんにもご案内を差し上げようと考えています。実際に見ていただきチャンスをいただこうと。


災害時に不可欠なBCP支援事業
 ─ 単なる物流網ではなく低温という付加価値が強みになりますね。加えて、BCP(事業継続計画)支援事業にも注力していますね。

 和佐見 これからの日本では地震や台風、豪雨、豪雪といった災害や異常気象の頻発が懸念され、危機時に自治体などへの物流面での支援が欠かせなくなります。そこで災害が発生したときに当社が必要な車両や人員を提供したり、医薬品や食品の輸送・仕分け・配給稼働を手掛けていきます。既に11の都道府県と協定を結んでおり、20以上の市町村とも結んでいます。

 ここでは全日本トラック協会の傘下である都道府県のトラック協会とも協力しながら、やるべきことを棲み分けして連携を深めていきます。全国の47の都道府県と1718の市町村と協定を締結することが目標です。

 この大規模災害時における支援活動に関する協定は、企業とも締結しています。協定を結ぶことによって、災害が起きたときに燃料の灯油などが不足した場合でも、当社のネットワークを使って調達することができます。東日本大震災のときは東北で灯油が足りなくなったことが社会問題となりました。それを解決する手立てになります。

 また、先ほど申し上げた食品の温度管理のノウハウが当社にはありますから、もっと長期的に備蓄品の保管管理ができる仕組みを提供していくことも可能です。そして、いざ何かあったときには全力でピッキングして品揃えした備蓄品をトラックで素早く配送すると。被災された皆さんの所にお届けすることは我々の本業です。これは社会貢献型のビジネスになります。

 会社の成長を求めることは当然ですが、私自身がトラック1台で創業して、ここまで成長することができた恩があります。その恩を返していくことを忘れてはいけないと思っています。

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