「構造改革の成果を出していく」 キヤノンCEO・御手洗冨士夫の訴え!
財界オンライン / 2022年10月13日 7時0分
ようやく増収増益基調に戻すことができた
─ コロナ禍の2年半であらゆる資源が高騰し、半導体不足も続いていますが、御手洗さんは足元の経済環境をどのように感じていますか。
御手洗 現在、世界を席巻しているインフレは、これまでと違い、新型コロナウイルスの影響によって引き起こされた「モノ不足」に起因しています。
またその結果、日本の産業界は明暗が分かれています。コロナのパンデミック(世界的流行)により、飲食業界やホテル業界、航空業界などが大きな打撃を受けた半面、物流業界などは業績も好調です。
国内産業だけを見ても業績は旗幟鮮明に分かれています。
─ 7月時点の発表では、今期(2022年12月期)は連結純利益が2620億円の見通しで、08年のリーマンショック後では最高になりそうです。
御手洗 おかげさまで業績は堅調です。パンデミックが始まった2020年は、中国・アジア地域でロックダウン(都市封鎖)が起こり、その結果、部品不足・半導体不足が引き起こされました。当社においてもアジアのいくつかの工場で生産が滞り、業績も減収減益を余儀なくされました。
20年12月期の純利益は833億円と前年比では大きく落ち込み、役員報酬の返上はもちろん、長年に渡り維持・向上を続けてきた配当も半分に減配せざるを得ませんでした。非常に厳しい局面でしたが、コスト削減を徹底し、また、調達の工夫により部品不足や半導体不足の影響を最小限に抑え、ようやく増収増益が見えてきました。
また、モノ不足によるインフレが継続したことで、調達コストや物流コストも膨れ上がりましたが、商品価格の値上げなどにより、このインフレの中をやりくりしてきたわけです。
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─ コロナ禍の2年半はずっとインフレ基調にあったわけですね。
御手洗 アメリカはインフレになると金利を上げて、インフレを抑制しようとします。アメリカには低所得層も多く、食料費や燃料費など、基礎的な品目、特に輸入品目の価格を抑える必要が政治的に求められます。そのため金利を上げて通貨を強くして、ドルを強化することで輸入価格を抑えようとします。一方、日本は金利を上げることができず、日米の金利差が広がることでかつてないほどの円安状態になっています。
当社は輸出産業ですから、決算上、円安はプラスに働きますが、そういったことも、今年の増収増益に寄与しています。また、モノ不足からくるバックオーダーもまだ解消できていないことから、来期もある程度希望が持てるのではないかと考えています。
─ キヤノンは来期も好業績が期待できると。
御手洗 この先の状況がどうなるか読み切れませんが、少なくとも期待は持てるのではないかと思います。
今回のインフレは、過去にあったように、好景気が続き、過剰流動性が起きて発生したインフレではありません。そういった場合のインフレは、金融政策で収めることができます。しかし、今回のインフレは、モノ不足が原因となったインフレですから、需給関係が正常に戻るまでは解消されません。こうした状態は1年以上続くのではないかと思います。
─ キヤノンはこの数年、M&A(合併・買収)という手法によって、医療機器や監視カメラ(ネットワークカメラ)などの新規事業を育成してきました。
御手洗 構造改革に終わりはありません。過去10年近くにわたり事業ポートフォリオの入れ替えをしてきたことにより、成長を期待できる企業体に変わってきました。
特に医療機器事業は人々が安心・安全を希求する今後の世界を考えても不可欠なものです。カメラやプリンターなど、当社がこれまで主力としてきた事業は時代の流れの中で1兆円近い売り上げを失いましたが、ようやく新規事業がそれを補うところまで来ましたので、これからさらに構造改革の成果をお見せできると考えています。
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