新事業開発の不安感を期待感に変えろ! 村田製作所の「ユニークな人材育成術」
財界オンライン / 2022年10月12日 7時0分
新規事業は不安がつきもの
「当社は新商品の比率が40~50%あると言われているが、それは現在流れている商品に対して新しいスペックや機能をつけたものであり、根本的に新しいモノを生み出しているわけではない。もっと誰もやっていないことにチャレンジして、市場に風穴を開け、将来の柱となるような事業を育成したい」
こう語るのは、村田製作所執行役員技術・事業開発本部事業インキュベーションセンター長の安藤正道氏。
世界シェア首位の積層セラミックコンデンサーなど、世界トップシェアの電子部品を手掛ける村田製作所。近年、同社が社会課題の解決に向けて取り組んでいるのが、2021年4月から始まった『η(イータ)プロジェクト』だ。
同プロジェクトは、短期的ではなく10~20年後に大きく花開くような新規事業を創造しようという試み。安藤氏曰く、「η」は物理用語で〝熱仕事変換係数〟を表しており、「情熱を仕事へ変換するんだ」という願いが込められている。
プロジェクトに賛同する人材は社内で公募。その結果、現在は20~50代の社員約10人がサポート役である部門長らの協力を得ながら、新規事業の創出にあたっている。
「一括りにはできないが、若い人は不安に身を置くということをすごく嫌がる傾向がある。しかし、新規事業は5~10年ずっと不安の中に身を置くことでもある。でも、新規事業は不安がつきものであり、不安イコール期待感なんだと。そういうことを部門長クラスが伴走して、一生懸命に説いて分からせてあげないといけない」(安藤氏)
これまでも、同社では2000年代に入って、新事業にチャレンジできる『未来のとびら』制度をつくったり、当時の村田恒夫社長(現会長)宛てに直接新規事業の提案ができる『恒夫ポスト』を設置したりして、新たな事業の種を募ってきた。
しかし、現在の業務と兼任する形で新事業創出を募っても、会社から評価されるのは現在の仕事をどれだけこなしたかであり、成果が見えるのに時間がかかる挑戦は評価されにくいといった問題も見えてきた。このため、同プロジェクトでは、「もといた事業とは退路を断つ覚悟のある人だけを選抜」(安藤氏)し、テーマ設定にも2~3年単位で時間をかけているという。
「テーマを出せと言うと、インターネットで簡単に調べて『こんなのあります』と言う人がいるけど、ネットに出ているようなことは誰かがすでにやっている。そうではなく、2~3年かけていいから、何をやるかというテーマを決めてほしい。自分たちで必死に考えたテーマであれば、たとえ失敗したとしても、結果として、大きな人材育成にもなると思う」(安藤氏)
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創業者の思いを愚直に守っていくことが…
村田製作所の2023年3月期の連結業績は、売上高1兆9300億円(前年同期比6・5%増)、営業利益4400億円(同3・8%増)と増収増益の見通し。このうち、現在は売上の約4割が通信向け、約2割がモビリティ向けを占める。
同社は時代の変化によって成長分野を転換してきた。1944年の創業以来、その時代に求められた電子部品を開発。ラジオやテレビ、携帯電話、パソコンへと用途を拡大してきた。
2010年代前半はスマートフォンを中心とした通信向け売上が収益の柱だったが、現在は自動車を基盤市場と位置付けて成長戦略を実行。カーエレクトロニクス向けの売上構成割合を拡大させることで通信向けの依存度を下げ、収益源を多様化できていることが同社の強みになっている。
同社が現在強化しているのが、モビリティ、ウェルネス、環境の3分野。今後はこれら3分野を中心に、新たな事業を創造しようとしている。
「秘訣なんて何もない。創業者の村田昭・名誉会長も仰っていたけど、お客様の要望にしっかり応えているか。『技術を錬磨し 科学的管理を実践し 独自の製品を供給して 文化の発展に貢献し……』という社是を守ることが大切で、創業者の思いを愚直に守っていくことが世界でトップシェアをとっていく秘訣なのだろう」と語る安藤氏。
足元の業績が好調な間に、いかに次の手を打っていくか。創業の原点を忘れず、新たな市場掘り起こしを図る同社である。
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