大和総研副理事長・熊谷亮丸氏が提言「感染症への耐性の強い社会を目指せ!」
財界オンライン / 2022年10月18日 18時0分
感染症を完全に「制圧」することは極めて困難である。
人類が撲滅できた感染症は天然痘だけだとも言われている。歴史的にみると、感染症の拡大とグローバリゼーションはセットであり、近年の地球環境破壊の深刻さなどを勘案すると、今後も人類は様々な感染症に悩まされ続けることになるだろう。
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そもそも、地球が誕生したのは約46億年前のことであるが、ウイルスは約30億年前から既に地球に存在していた。ホモ・サピエンスが誕生したのは20万年程度前なので、人類は地球上では新参者の部類に属するのだ。
最終的にわれわれが目指すべきは、感染症を「制圧」することではなく、感染症と「共存」できるような、「感染症へのレジリエンスがある(耐性の強い)社会」を構築することなのである。ポイントは、以下の3点に集約される。
第一に、感染症に対する検査体制や、医療体制が整備されており、「医療崩壊」のリスクがないことである。具体的には、高齢者や、持病や疾患があり重症化のリスクが高い方々などに対して、重点的に高度医療が提供されるような状況を作り上げなければならない。
こうした状況を実現するためには、「医療のデジタル化」の推進が大きな課題となる。次に指摘する、オンライン診療の拡大などに加えて、感染症の流行状況を常に監視しつつ、エビデンスに基づいた対応を行うことが必要である。
また、感染症の治療薬やワクチンの開発などに向けた、国際的な連携が不可欠であることは言うまでもない。
第二に、リモートな(非接触型の)社会が実現していることである。
具体的には、テレワーク(在宅勤務)、オンライン診療、オンライン授業を実現・拡充すること等を通じて、「Society 5.0」を推進する必要がある。
その過程で、岩盤規制などと言われる、医療や教育などの分野での規制緩和を断行することが不可欠だ。
加えて、デジタル化の徹底的な推進等を通じて、本当に困っている方々に対する、きめ細かいプッシュ型の支援を迅速に行える体制を整備せねばならない。
第三に、将来的には、世界的にSDGs(国連が掲げる、持続可能な開発目標)が推進されて、環境破壊や所得格差の拡大に歯止めがかかっていることを望みたい。
感染症拡大の根本的な原因とも言える、野放図な都市開発による環境破壊や、所得格差の拡大などに歯止めをかけなくてはならない。
感染症が容赦なく低所得者層の尊い命を奪うという「パンデミックの逆進性」を是正する観点からも、こうした取り組みは不可欠であろう。
岸田政権には、こうした中長期的な視点から、わが国が進むべき道筋を国民に明確に提示してほしい。
(9月21日執筆)
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