【著者に聞く】みずほ銀行チーフマーケットエコノミスト・唐鎌大輔『「強い円」はどこへ行ったのか』
財界オンライン / 2022年10月17日 18時0分
為替は世界中の市場参加者が日本をどう見ているかの現れ
近年、地盤沈下が指摘される日本経済。9月20日時点のドル/円相場は、2022年初来の値幅(最高値―最安値)が31ドルとなっていて、これは円安に振れた年としては過去最大の大きさになる。こうした歴史的な動きを見せるからには、背景に何があり、どんな構造変化が起こっているのか、一度しっかり検証してみたいと考え、筆をとることにした。
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一般的には、通貨高は先進国の悩みであり、通貨安は途上国の悩みである。
10年前までの日本は通貨高にずっと悩んできたわけだが、足元で円安に悩むようになったのだとすれば、ある意味で、日本が先進国から途上国へ落ちてしまったと読み解くこともできる。
いずれにせよ、為替に対する社会規範がこの10年で変わったということは言えるだろう。
今年5月、米テスラ創業者のイーロン・マスク氏は、ツイッターで「出生率が死亡率を上回るような何らかの変化がない限り、日本はいずれ消滅するだろう」と指摘した。
出生率が上がっていかないと、国の活力は上がらない。良くも悪くも、人は歳をとると物事を変えることが億劫になる。
このような日本の閉塞感を打破したいのであれば、やはり、子供や若者に資源を傾斜すべきである。
こうした状況を受けて円安になり、食料にしろ、エネルギーにしろ、日本は海外から高い値段で資源を購入しているのだ。
金利は日銀の金融政策でコントロールできるが、為替はそうはいかない。為替はコントロールのきかない金融マーケットなので、世界中の市場参加者が日本をどう見ているかが反映されている。
それを警鐘だと捉えることができないのであれば、日本の閉塞感は今後も続くだろう。
政治家はマーケットの動きから何かおかしいのではないかと考え、生産年齢人口を増やしていく方向に舵を切るべきだと思う。
みずほ銀行
チーフマーケット・エコノミスト
唐鎌 大輔
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