【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
財界オンライン / 2022年10月29日 11時30分
昨年から続く深刻な電力需給ひっ迫やロシアによるウクライナ侵攻によって、エネルギー安全保障の強化が、エネルギー政策において極めて重要な問題であることが再認識された。
地政学やエネルギー安全保障というのは、私がもともと関心を持ってやってきた分野だ。今回は半世紀に一度というレベルの大きな危機であり、これだけ国民の危機意識が高まっている時はない。であれば、今まで私がエネルギー研究をしてきた中で蓄積してきた知識が活用できるのではないか、また、今こそ活用しなければならないと考え、今回の出版の運びとなった。
日本はエネルギーを大量に使う工業国家であり、産業国家である。1億人を超える国民がいて、それぞれが日々の生活をおくっているわけだが、その生活を支えるのがエネルギーである。そのエネルギーは、残念ながら日本国内に化石燃料資源がないため、国際的なサプライチェ―ン(供給網)の中で、資源を確保していかなくてはならない。
およそ半世紀前の石油危機の際にこうした前提が大きく揺さぶられ、日本はエネルギー資源の多様化へ向けて努力してきた。しかし、それでも資源の輸入依存が高く、脆弱な状況は変わっていない。
一方で、カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)へ向けた脱炭素への対応などの環境変化があり、日本も対応を迫られている。
現在は、米中・米ロの対立に代表されるように、世界で分断が起こっている。ウクライナ危機はまさに象徴的なものである。こういう中で、国際的なサプライチェーンの中に大きく依存している日本が、国家として生きていく道を左右するエネルギー問題をどう考えるか。今はそうしたことを突き付けられている。
原点に立ち返って、現在の国内外の状況を改めて整理し、エネルギー価格の高騰と国際エネルギー市場の不安定化がどんな影響をもたらすのか。皆さんの参考になれば幸いである。
今冬も全国で節電要請 綱渡りの電力需給続く
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