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三菱重工や日立が相次ぎ新型原子炉の開発に参入へ

財界オンライン / 2022年10月31日 15時0分

写真はイメージ

2030年代半ばに実用化を目指す方針
「世界最高水準の安全性で社会に貢献していく」─。

 三菱重工業(泉澤清次社長)が、「革新軽水炉」と呼ぶ新型原子炉を関西電力などの電力4社と共同開発することになった。

 既存の加圧水型軽水炉(PWR)を基に革新軽水炉を開発し、2011年の福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて高い安全性を追求。例えば、原子炉格納容器を覆う遮蔽壁の厚さを従来比約2倍にし、自然災害やテロなどへの耐久性を向上。炉心溶融が起きた場合でも、溶け落ちた核燃料を原子炉の下に備える「コアキャッチャー」という設備で保持・冷却できる。

 また、日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)の合弁会社も、革新軽水炉の開発を進めている模様。三菱重工は30年代半ばに革新軽水炉の実用化を目指す方針で、日立・GEも同時期を念頭に置いているとみられる。

 各社の動きは政策の転換が大きい。政府は8月、次世代型原発の開発を検討する方針を表明。従来は原発の新増設や建て替えは想定していないとの立場だった。だがロシアによるウクライナ侵攻などの影響で電力価格の高騰や、エネルギーの安全保障といった問題への対処が重要な課題になっている。こうした情勢に産業界が呼応した格好だ。

 ただ、革新軽水炉をはじめとする次世代原発の開発が順調に進むかは予断を許さない。三菱重工による原発新設は09年に北海道電力が運用を始めた泊原発3号機以来で、空白期間は長い。また、日本の原発関連の技術力自体も懸念されている。

 資源エネルギー庁における革新炉開発予算はピーク時の10年ごろは約100億円あったものの、ここ10年ほどは半減。経済産業省は「民間企業を取り込んだプロジェクト組成・管理の知見蓄積が進んでいない」と危機感をあらわにする。

 無事に開発が完了しても、稼働には「(原発が立地する)地元の合意が必要」(三菱重工幹部)だ。また、原発は長く〝核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)〟処分を巡る課題が未解決のまま。電力は必要だが、長期的な課題が残る中で、次世代原発も推進できるかが問われる。

【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅

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