なぜ、日立は国内でも『ジョブ型』雇用を導入するのか?
財界オンライン / 2022年11月7日 18時0分
海外売上高比率は59% 社員も57%が外国人に
「日本は少子高齢化し、若者を中心に世代間の価値観が変化。転職の指向も強い。また、事業環境が大きく変化していることを踏まえると、新卒一括採用で人に仕事を割り当てるとか、年功で定年まで働いてもらうというやり方では、多様な人材が入りづらい。外国人と日本人が一緒に働く時に、日本人だけ違うマネジメントになるというのもできないので、〝ジョブ型〟に持っていこうと」
こう語るのは、日立製作所執行役専務CHRO(最高人事責任者)の中畑英信氏。
日立の働き方改革が急ピッチで進められている。その象徴が日本国内の社員にも、欧米で定着している「ジョブ型」雇用を導入しようということである。
「ジョブ型に持っていく目標は成長のため。会社も個人も成長していく。このためにもジョブ型に持っていく。自らキャリアを考えて、手を挙げて自分から学ぶ。こういう世界をつくっていく」(中畑氏)
日立が徐々に働き方を変化させてきたのは10年ほど前から。最大のきっかけは、2009年度に当時の製造業で過去最大となる7873億円の最終赤字を計上したことだ。
同社は経営危機に陥ったことから経営戦略を大きく転換。川村隆氏、中西宏明氏、東原敏昭氏と3代続いたトップが様々な構造改革に着手した。
この10年でまずやったことは、グローバルでの人材基盤を再構築すること。2015年度より「人財マネジメント統合プラットフォーム」(日立では〝材〟ではなく〝財〟と書く)を導入。これまで個人のスキルや年収、考課調書など、各社や国によってバラバラだった情報をグローバルに統合。人材データの〝見える化〟を図ってきた。
人材の多様化も進め、役員体制も女性や外国人を積極的に起用。2012年度には女性や外国人の役員はゼロ(全てが日本人男性)だったが、現在は外国人が18%、女性が12%まで増加。2030年には両方30%にすることを目標にしている。
こうした取り組みの結果、1999年度に海外売上高比率20%だった日立は、21年度には59%まで上昇。社員もグループ37万人のうち57%にあたる21万人が外国人となった。
中でも特徴的なのが21万人のうち10万人は、昨年7月に約1兆円で買収したIT企業・グローバルロジックなど、直近3年間のM&A(合併・買収)によって加わった人たちである。
「グローバルロジックの意思決定のスピードと日立では雲泥の差。これからデジタルの事業をやるためには、ある程度スピードをもってやっていくことが必要。過去の日立の決済手順では、あるレイヤーでチェックして、次のレイヤーへ行き、それで経営会議にかけて決まると。経営会議も月に1回ということでは遅すぎる。ここは変えていかなければならない」(中畑氏)
このため、今後は意思決定における段取りをより簡素化し、素早い判断ができるような体制の構築が求められるだろう。
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人は変化をしたくないものだからこそ…
近年はコロナ禍でのテレワークの普及もあって、各社が新たな働き方を模索。富士通も国内グループの一般社員4・5万人にジョブ型を導入している他、NECは23年度に全社員を対象にしたジョブ型への移行を検討。NTTは管理職にジョブ型の人事制度を導入し、社員にはテレワークを基本とする新たな働き方を進めている。
ジョブ型を導入する企業には、競争原理を働かせて国際的な競争力を高めたり、若手の活躍を促したいという狙いがある。一方、中小企業のように人員が限られ、一人が複数の業務を効率的にこなすことが求められる企業では導入が難しい。それだけに全ての企業がジョブ型を選択することは現実的ではないが、今後も企業の試行錯誤は続くだろう。
日立の社内調査によると、ジョブ型の必要性を感じている人は82%。自分でキャリアをつくることの必要性を感じている人も87%になった。ただ、実際に必要なスキルを得るため行動している人は42%にすぎない。
中畑氏は「人は変化をしたくないもの。経営戦略に基づいた人財戦略を10年かけてやってきたが、まだまだこれから。行動変容を促したい」と語る。
従来の終身雇用を前提とした日本型雇用の見直しが進む中、個人が自らのキャリアを考え、多様な働き方を模索する時代になったといえそうだ。
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