【株価はどう動く?】FRBの利上げはいつまで続くか、日本は来年「インフレ、円安、株高」に?
財界オンライン / 2022年11月4日 7時0分
米中間選挙が相場の転換点に
米国経済がリセッションに入っていくのか、あるいはリセッションを回避してインフレを抑えることができるのかが、今後の大きなポイントです。
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米国の著名エコノミストや投資家は、インフレを抑えるための利上げを続けると、必ずマーケットはハードランディングすると懸念しています。
そうなるとニューヨークダウやナスダック、S&P500が、今より20~30%下落するという見方が大勢を占めています。
ですからFRB(米連邦準備制度理事会)が、いつまで利上げを続けることができるか。「前門の虎」、つまりインフレ退治に集中していると、「後門の狼」、リセッションがやってくるという流れが、この年末にかけて、ますます強まるのではないかと予想されます。
次回、次々回のFOMC(米連邦公開市場委員会)まで、0・5%、あるいは0・75%上げるというのがマーケットの読みですが、どんなに続けても12月まで、年内残り3カ月の利上げで金利にピークアウト感が出てくる可能性があります。
または、米国経済の様々な指標でリセッションの懸念が出てくるという状況になるのではないか。例えばブルームバーグのエコノミックモデルでは、米国経済が次の12カ月にリセッションになるのはほぼ100%の可能性があると予想しています。
今はFRBも米財務省もインフレ退治を最優先に考えていますが、景況感が非常に悪くなってくると、インフレよりもリセッションを心配するようになるでしょう。年内、あるいはどんなに遅くとも2023年春くらいまでに、そうした状況になるのではないでしょうか。
その間、米国の株式市場は波乱の展開が続きます。「金利にピークアウト感が出た」という一次情報が出るとニューヨークダウが暴騰し、「やはり利上げだ」という情報が出ると急落するということを繰り返すと見ています。これを相場の世界では「波高き相場」と言い、天井圏で現れる典型的な株価の動きです。
そうした中、米国はこの11月に中間選挙を迎えます。結果によっては、今後の金融政策やマーケットの動きが左右されることになるかもしれません。
一時は共和党の圧勝が伝えられていましたが、ここに来て接戦という見方も出てきています。選挙は相場と同じく「一寸先は闇」で、結果が出るまではわからず予断を許しません。
第1のシナリオは共和党の圧勝です。この場合金利のピークアウトは早まると見ています。なぜなら、共和党はどちらかと言えばウォール街、企業寄りだからです。また、この展開は株高につながります。
第2のシナリオは民主党勝利です。この場合にはこれまで通り、バイデン大統領のバラマキ政策の流れが続きます。このツケが猛烈なインフレになっているわけです。
第3のシナリオは接戦で、どちらが勝ってもバイデン政権のリーダーシップが弱まるというものです。この中間選挙は相場の転機になる可能性がありますので要注意です。
ただ、政治の動きがどうなるにせよ、FRBや米財務省はインフレ退治に注力するでしょうから、金融引き締めを嫌気しての波乱相場は年内いっぱい続くものと見ています。そして選挙結果を見て、来年年明け以降、動きが変わってくるかどうか。
日銀が金融政策を変更しない理由
一方、日本は世界的インフレの中でデフレ状態が続いています。日本銀行の黒田東彦総裁が就任以降、「異次元の金融緩和」を含め取り組んでいるわけですが、来年で10年になります。
ただ、32年ぶりという円安によって、日本がデフレを脱却できる可能性が出てきています。円安で物価が上昇してインフレに向かうわけですが、インフレといっても足元の日本がゼロ金利ですから、金利が上がっても2、3%でしょう。
日銀が「物価高で庶民が苦しんでいるのに、なぜ金融緩和をやめないのか」と批判されても方針を変えないのは、物価目標2%達成の可能性が高まっているからです。
今後、おそらく日本は円安で潤うことになります。円高のデメリットより、円安のメリットの方がはるかに大きいのです。円安がどの程度まで進むか、どれくらいの期間続くかにもよりますが、大げさに言えば、超円安となれば、日本経済にとって「神風」となると見ています。
例えば、製造業を中心に円安で業績が改善すると思いますが、それを織り込む株高がいずれ始まります。
過去10年の経済状況、日本の場合は過去30年と言ってもいいかもしれませんが、表すと「デフレ、円高、株安」でした。しかし次の10年は「インフレ、円安、株高」となります。過去10年とは全く違う10年が23年から始まる可能性があるのです。今はその転換点、踊り場と言えます。
「インフレ、円安、株高」が始まると、当然のことながら資産インフレ相場が始まります。円安メリットのある企業の株価が上がり、製造業の業績が改善すれば設備投資も出てきます。これは雇用回復、賃金上昇を呼び込むことにもつながります。これが楽観シナリオです。
中立シナリオでは、円安の追い風にも関わらず、財務省が円高を目指してドル売り・円買い介入をしたり、来年4月就任の新しい日銀総裁が利上げをするなど、マーケットにアゲインストの政策を打つと、楽観シナリオほどの勢いはなくなります。
足元で、防衛予算拡大に伴って法人税、所得税を増税するという議論が出ていますが、これが現実のものとなると、日本経済は悲観シナリオに向かい、デフレに逆戻りするでしょう。
政府は円安メリットを生かして、構造改革、成長戦略を打って税収増を目指すような政策を打ち出すべきです。この発想が政府当局に見られないのが非常に残念ですし、こうした政策を打たなければ日本の未来は暗い。30年間も株価が高値(天井)を更新していないのは先進国では日本だけです。正しい国策が実行されなかったからです。
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