国産初のコロナ飲み薬が誕生 塩野義製薬「ゾコーバ」を緊急承認
財界オンライン / 2022年12月13日 15時0分
「職を辞するつもりでいた」
「インフルエンザと同じように、普通に病院に行って検査をし、『陽性ですね。では、お薬を出しましょう』と言われて自宅で安静にする。そして病気が治って社会生活に戻ることができる。そういったフリーアクセスの国民皆保険の制度に合った薬の開発が求められていると思っていた」─。こう語るのは塩野義製薬社長の手代木功氏である。
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国産初の新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」が承認された。軽症・中等症患者向けで服用が感染初期に1日1回、5日間と使いやすく、医療機関や患者の負担軽減が期待される。
今回の緊急承認を受けて『財界』誌のインタビューに答えた手代木氏は「我々としても大きな学びをいただいた。次にもしパンデミックが起こったときには、もう少し速やかに国民の皆様方に必要な薬やワクチンを届けるためにはどうすれば良いか。その学びを得るためのマイルストーンになったと思っている」と心境を語る。
ゾコーバは2022年5月に創設された緊急承認制度の初適用となったわけだが、その開発フィロソフィーは既に実用化されている米メルク製の「ラゲブリオ」と米ファイザー製の「パキロビッド」とは違う。
米2社の薬は、いずれも高齢者など重症化リスクのある人に限定。基礎疾患(持病)のない低リスクの患者向けには使用できない。米国では日本のような国民皆保険制度がないため、重症化して入院した場合に、多額の入院費や治療費がかかる。その負担を少しでも和らげるために、両社は重症化リスクのある患者で治験を進めていた。
一方の塩野義のゾコーバは軽症・中等症の患者で治験を実施。米社の薬とは異なり、薬の効果が最も出にくいところでの治験だった。しかし、緊急承認を得たことでゾコーバは外来診療で幅広く処方できるようになる。
そんな手代木氏は「フェーズ3で結果が出なければ職を辞するつもりだった」と打ち明ける。ゾコーバはまだ〝仮免許〟。データを提供しながら1年以内に正式承認を得なければならないが、「育薬」というステージを迎えたことで日本の製薬業界のステージが変わったとも言える。
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