2023年を乗り切るキーワードは? 『東京ガス』社長 内田高史
財界オンライン / 2022年12月13日 18時0分
『移行期のエネルギーとして天然ガスの重要性は一層高まる』
ロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、日本のエネルギー安全保障をめぐる環境が一変。原油や石炭などの化石燃料の高騰や、ロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」をめぐるLNG(液化天然ガス)供給への不安も露呈し、日本のエネルギー調達の脆弱性が改めて浮き彫りになっている。
日本はサハリン2からLNGの年間輸入量の約8%に当たる600万トンを調達する。サハリン2の旧運営会社とLNGの長期購入契約を結んでいた発電会社JERAや九州電力、東京ガス、広島ガスなど、各社は新会社との契約を締結。調達量や価格などの条件は旧会社との契約内容から変更はないという。
東ガスはこれまで、LNG輸入量の約1割をロシアから調達してきた。大半がサハリン2からの調達で、ロシアの対応次第では、今後もLNG調達の途絶リスクは残ったままだ。
そうした中、内田氏は「ウクライナに侵攻した国から調達するのか? という声があることは承知しているが、日本のエネルギーの安定供給を考えたら、今、サハリンのLNGを手放すわけにはいかない」と指摘。
ただ、同社はこれまでもLNG調達先の多様化を進めてきており、引き続き、あらゆる事態を想定したLNG調達先の多様化を進めていくとしている。今後は、カナダやモザンビークなど、新たな国のプロジェクトからLNGを調達する予定である。
一方、中長期的には脱炭素化への対応が急務で、同社も太陽光や風力、バイオマス発電など、再生可能エネルギーの開発を急いでいる。ただ、内田氏は「いきなり全てのエネルギーが再生可能エネルギーに替わるわけではない。トランジション期(移行期)に徹底した低炭素化を進めていくことが重要であり、天然ガスは大きな役割を果たすエネルギー」と強調。
一般的に、石炭から天然ガスに転換するだけでCO2(二酸化炭素)は50%削減できると言われ、既存の石炭火力発電所をガス火力発電所に転換することによって、低炭素化を進めることは可能だという。
また、2030年代の社会実装に向け、再生エネの電気で水を分解してつくった水素とCO2を合成してメタンをつくる”メタネーション”技術の開発に取り組んでいる。都市ガスの原料である天然ガス(メタン)を合成メタンに置き換えることで、将来的なガスの脱炭素化を目指す同社である。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
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