2023年を乗り切るキーワードは? 『ANAホールディングス』会長 片野坂 真哉
財界オンライン / 2022年12月14日 18時0分
コロナ禍、ウクライナ危機、円安など、足元の経営環境は厳しくとも、たくましく時代を生き抜こうとする企業はいつの時代にも存在する。そうした企業のトップはこの時期、何を語るのか。そして、どういう一手を繰り出していくのか─―。
「1円でも稼ごう。アイデアを出して新しいことをやろう」
コロナ禍で航空便によって人を運べなくなった際、「1円でも稼ごう」という言葉を使って、一歩でも前に進むその大事さを訴え続けたのが片野坂氏。
コロナ禍で実際にやったことは何か? ハワイ便で使う大型の飛行機を国内線でチャーターして遊覧飛行。遊覧中に機内食を振る舞った。飛行機をレストランに見立てたりもした。また機内食を通販するなど飛行機の移動という本業で収益を上げられない中での工夫を施した。
ライバル企業と収益面での差別化要素となったのが貨物だ。片野坂氏はコロナ禍で貨物を「救世主」と表現。同社は大型の貨物専用機を2機、中型の貨物専用機を9機保有しており、海運のコンテナ船などが混乱した折、船便に代わって航空便で貨物を運ぶ需要を捉えた。
「マスクだけでなく、ワクチンや半導体、アパレル、自動車部品などを運んだ。中でも自動車部品が多いメキシコ便は減便しなかった」という。メキシコには日本の自動車メーカーの生産拠点が多く集積していたからだ。
そして今後は「非航空事業の強化を進めていく」という考えを示す。もちろん、航空事業という主力事業に変わりはないが、3800万人に及ぶマイル会員のデータを活用してアプリケーションの開発やメタバースなどにも取り組む。
ANAが提供するアプリを使い、マイル会員がマイルで買い物や体験ができるようにする。旅行商品や保険、医療なども他業種の企業と連携することによって提供可能となる。また、同社はメタバースにも着手。バーチャル空間でトラベルをし、買い物もできるというものだ。
他にも「ニューミー」と呼ばれる瞬間移動ロボットも展開中だ。「買い物に行けないシニアが自宅にいながらデパートで買い物ができたり、離れた所で授業を受けたりすることができます」。他にもドローンや空飛ぶクルマの事業化も見据える。航空から派生した新事業開拓に挑む。
肝腎の本業では新規路線開設に挑む。
「当社は米ヒューストンや豪パースなど、誰も飛んでいない新しい所に飛んできたというDNAがある」と片野坂氏は延期となっている路線の再開にも意欲を示す。
「我々は飛行機のネットワークを通じて経済の再開に必要なインフラだ」という片野坂氏の思いである。
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