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第一生命経済研究所・熊野英生氏の懸念「これから”冬”が来るのか?」

財界オンライン / 2022年12月19日 11時30分

2023年の景気見通しは少し厳しい。その厳しさは日本経済というよりも、海外経済について強くなりそうだ。米国の金融引き締めが本格化するからだ。米経済はインフレ率を7%台から2%へと落としていく。賃金の伸び率は低下し、住宅価格も下落するだろう。すでに大手IT企業の数社が大規模な人員削減を発表している。それは始まりに過ぎず、今後米国全体の雇用悪化が広がっていくとみた方がよい。米国では住宅ローン、クレジットカード、自動車ローンの上昇を通じて、高金利が消費抑制に直接的に効いてくる。政策金利が11月の3.75~4.00%から5%近くまで上がると、相当な景気減速の圧力になるはずだ。

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 米国の金融マーケットでは、投資家たちが消費者物価の伸び率が10月にそれまでの8%台から7.7%へと鈍化したことをみて、政策金利の引き上げペースが小幅になって、近々、政策金利の上限に達すると期待感を抱いている。米株価はリバウンドして、長期金利もいくらか上がった。金融引締めが終わることへの甘い期待が膨らんでいるのだと思える。

 その点、筆者はマーケットの楽観はいずれ裏切られるとみている。米国の金融引き締めは、かなり景気を悪化させて、失業率を上昇させる。それがなければ、7.7%のインフレ率が2%には低下していかない。

 さて日本経済はどうだろうか。米国経済の悪化によって、輸出が減り、製造業の企業収益も下向きに変わる懸念がある。輸出に関しては、米国と車の両輪の関係を成している中国経済の悪化もある。中国は、ゼロコロナ政策もあるが、不動産不況がいよいよ本格化しそうである。日本にとっては悪いタイミングで、米中がそろって成長ペースを落としていく。2023年は、海外からの景気下押し圧力が強まっていく。

 反面、日本は米欧に比べて経済成長ペースは底堅いという見方もある。OECD(経済開発協力機構)やIMF(国際通貨基金)は、23年はいずれも1%台とそこそこに伸びると見通しを示している。理由は、日銀が米欧のように厳しい金融引き締めをしないからだ。それはわかりやすいが、本当に米欧経済が悪化することの影響に巻き込まれずに済むのだろうか。筆者は、過去のリーマンショックやITバブル崩壊と同じように、海外からの需要減が波及してきて、景気は今よりも厳しくなると予想している。

 日本の輸出数量をみると、20年春のコロナ禍が最も深刻だったときの落ち込みから回復を続けている。現時点では、日本経済の体温はまだ平熱を保っている。その感覚に基づいて、秋の気温は十分に暖かいので、この先も冬は寒くならないと言えるのだろうか。いや、やはり合理的に考えて、今回も海外からやってくる寒波は日本の景気を冬に向かわせると覚悟していた方がよいのではないか。


くまの・ひでお 1967年7月山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒。90年4月 日本銀行入行。同行調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月より、第一生命経済研究所へ入社。著書『籠城より野戦で挑む経済改革』(東洋経済新報社)、『どうすればリスクに強くなれるか』(近代セールス社)、『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』(文藝春秋)。

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