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危機の中に一筋の光明、埋もれたエネルギーを掘り起こす年に【私の雑記帳】

財界オンライン / 2022年12月18日 11時30分

新年の2023年(令和5年)の干支(えと)は癸卯(みずのとう)。陰陽五行説では、〝癸〟は水の陰のエネルギーを表し、〝卯〟は木の陰のエネルギーを表すのだという。

 干支を見ると、大体、縁起のいい話が多いが、〝癸〟は十干の最後にあり、生命の終わりを意味すると共に、新たな生命が成長し始めている状態なのだという。

 また、〝卯〟はウサギでその穏やかで柔和な様子から、安全、温和、温厚という意味がある。ウサギは飛び跳ねるし、卯年は何か事を始めるのに縁起がよく、景気も回復し、好転する年だとされる。

 コロナ禍は3年続き、ウクライナ危機は2年経った。世界経済も減速ぎみで、政治も米国のように国の分裂・分断状況が続く。

 そうかと言って、諦めてはいけない。分断、減速の中を耐え抜き、何とかソリューション(解決策)を見つけ出していきたいものだ。

 危機の中に、一筋の光明はある。そうした隠れたと言うか、埋もれたエネルギーを掘り起こす。〝癸卯〟の年にしたいものだ。

 地球の歴史は約46億年、そしてウイルスなどの微生物の歴史は約30億年。人類(ホモ・サピエンス)の起源は約20万年前と聞くと、「人」はこの地球上で、全くの新参者ということ。

 ウイルスのほうが遥か以前に、それも気の遠くなるような数十億年も前から存在。新型コロナウイルスといわれるから、ウイルス自身も進化しているのか分からないが、これからも「人」は未知のウイルスと遭遇するのであろう。

 命を奪いに来る者と遭遇した場合にどう振る舞うべきか─というテーマをわたしたちは常に背負っている。

〝ウイズ・コロナ〟(コロナと共に)と言われるのも、そうした考え、人生観が基本にあるのかもしれない。新参者はそれこそ謙虚に、自らの存在を見つめていかなければならない。そうした中での課題解決である。

 塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス感染症の飲み薬『ゾコーバ』が国の緊急承認制度に基づき、厚生労働省から新薬として承認された。

 初の国産コロナ経口薬。緊急承認制度は今年5月に創設されたばかりで、同制度の適用も初めて。

 米国のファイザー社やモデルナ社などにワクチン供給を頼ってきたわが国にとっては、待ちに待った新薬の開発である。政府は12月初めにも供給を開始する。

 この新薬開発は紆余曲折を経て、ここまでこぎつけた。塩野義製薬の開発・研究陣をはじめ、関係者の努力に敬意を表したい。
 初の国産治療薬ということで、国民も待ちに待った薬。

「これで、育薬の第一歩が始まりました」と社長・手代木功さんも思いを込めて語る。

『ゾコーバ』の承認を巡っては、2022年7月の厚生労働省が設置した専門家の審議で、「有効性が推定できない」と制度適用が見送られていた。

 そこで、塩野義製薬は同9月に最終段階の臨床試験の解析速報を公表。そのデータを事前審査した医薬品機器総合機構が「有効性を有すると推定するに足る情報は得られた」と評価。同11月22日、厚生労働省の薬事分科会と専門部会の合同会議で1年を期限とする緊急承認が得られたという経緯。

『ゾコーバ』の特長は、軽症・中等症向けで1日1回、都合5日間服用するというもの。

 これまで国内で使用されてきた海外製の新型コロナ飲み薬は重症化リスクのある人に限定されていた。『ゾコーバ』は感染初期段階でも使えるため、より多くの人に処方できるのが強み。

 感染症の治療薬はその国の保険医療制度、もっと言えば、〝国のカタチ〟とも密接に絡む。日本のような国民皆保険がない米国では、重症化しないと病院に行かないという国柄。いきおい、治療薬も重症患者向け用に開発される。

『ゾコーバ』は軽症、中等症の人にも幅広く処方できるのが特長。

 新型コロナ第8波の流行が懸念される中、国全体で幅広い対応ができるため、国民の安心・安全確保につながる。

 これからの本申請に向けて、「育薬の第一歩です」という手代木さんの言葉に実感がこもる。

 産業構造の変革と『人づくり』も密接に絡まる。中教審(中央教育審議会)会長であり、経団連の教育・大学改革推進委員会の委員長を務める渡邉光一郎さん(第一生命ホールディングス会長)は「産業構造と教育体系が大きく、ここ数年で変わろうとしている、まさしく節目だと思います」と語る。

 情報が社会基盤を支えるソサエティ5・0とDX(デジタル革命)との関係について、渡邉さんは次のように続ける。

「社会課題をSDGs(持続可能な開発目標)にかなうイノベーションなどで解決していこうと。しかも、それは人間を中心にして、人の創造性をもって、イノベーションでやっていこうと。ですから、科学的に合理的に社会課題を解決する。それの行く先は、SDGs解決だし、その先はさらにウェルビーイングになる。こういうことだと思います」

 社会運営の主役は「人」。その人がどう生きるかというテーマだし、「産業構造とか教育の方向が変わろうとするときは、学びの見直しがどうしても必要」ということでリスキリングやリカレント教育という言葉がよく使われる時代になった。

 社会全体での学び直しを〝リカレント〟とし、雇用や大学教育とも絡めて大事にしていこうということ。

「リカレントは広い概念で、キャリアアップのための教育やリスキリングをその中の部分的な概念として捉えるとわかりやすいと思います」と渡邉さん。

 なぜ、イノベーション型のGAFA(米国)が日本で生まれないのか? こうした命題とも人づくり・教育問題は深く関わる。教育制度はどうあるべきか?

「米国はイギリス型、カレッジ型の大学に戦後、ドイツのユダヤ系の留学生がたくさんいた。この人たちが米国にドッと流れ込んできた。これが大学院を形成し、ここで産学が密接な関係をつくった。イノベーションが生まれる構図に米国はどんどんなっていった」
 日本も産学の交流は必要だし、もちろん官との連携も大切。

 経団連は『。新成長戦略』と、〝新成長戦略〟の前に〝。(ピリオド)〟を付けている。従来の考え方に終止符を打とうという考えだ。
「産官学の連携もしっくり来るようになりました」と渡邉さん。

 社会全体が一つになって取り組む─。新しい〝国のカタチ〟づくりは2023年の一大テーマだ。

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