【農林水産省】ウクライナ侵攻下のAPEC 食料安保の議論は深まらず
財界オンライン / 2022年12月25日 15時0分
タイの首都バンコクで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、食料安全保障強化のための議論が深まらず、実効性のある対策を打ち出せなかった。
ウクライナ侵攻を続けるロシアの取り扱いに多大な時間が割かれたことが要因。会議は首脳宣言を発出するか否かで揺れたが、最終的には「ほとんどのメンバーがウクライナでの戦争を強く非難した」と明記する一方、「他の見解や異なる評価もあった」と記し、ロシアにも配慮した宣言をまとめた。
両論併記と評される宣言は、APECに先立ってインドネシア閉幕した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の文言を踏襲した格好だ。
ロシアがウクライナに侵攻した2月以降、主産地のウクライナから穀物の出荷が滞ったことに伴う食料不安から、小麦などの価格が急騰した。エネルギー高や米国の金融引き締めに端を発した通貨安も相まって、食料価格が跳ね上がり、新興国や途上国は経済的に厳しい状況に置かれている。
6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、中東やアフリカなどへの食料支援に計45億ドル(約6200億円)の拠出を決定した一方、APEC首脳会議は具体的な対策を提示できなかった。侵攻を非難する日米など先進国と、抵抗するロシアの応酬が続き、APECが機能不全に陥っていたためだ。
ところが、G20首脳宣言が採択される予想外の事態が起き、風向きが急変。成果を得るべく取りまとめに急遽かじを切った議長国タイは、閣僚共同声明と首脳宣言を発出し、かろうじて議長国としての体面を保った。
APECの旗印である自由貿易の促進についても進展はなかった。コロナ禍からの回復には環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などの推進が欠かせないが、目立った成果は得られず、今のAPECの限界を物語っている。
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