【国土交通省】航空燃料の脱炭素利用で廃食油の「争奪戦」が本格化
財界オンライン / 2022年12月26日 11時30分
航空分野の脱炭素化の切り札とされる「持続可能な航空燃料(SAF)」を巡り、原料となる廃食油の争奪戦が本格化してきた。世界的な需要増を背景に海外大手が日本の廃食油調達を拡大させており、取引価格が高騰。日本企業もSAF国産化へ調達網構築を図るが、苦戦は必至だ。
日揮ホールディングス(HD)とレボインターナショナル(京都市)は22年11月24日、東京・丸の内エリアの飲食店などから出る廃食油のSAF向け利用で三菱地所と合意したと発表した。関西国際空港など3空港の飲食店やホテルの廃食油利用で6月に関西エアポートと合意したのに続く動きだ。
日揮HDとレボ社はコスモ石油と共に、こうして回収する廃食油を使うSAF製造プラントを25年度初頭までに稼働させ、年約3万㍑を生産する計画。「国内初の国産SAFの大規模生産を目指す」と意気込む。
廃食油や植物などを原料とするSAFは二酸化炭素(CO2)排出量を従来燃料から約8割削減できるとされ、欧州では導入義務化の流れも強まっている。国土交通省は30年に日本の航空会社の燃料使用量の10%をSAFに転換する目標を設定。
海外航空利用分と合わせ、年171万㌔㍑のSAFが国内で必要になると見込む。現状では大半を輸入に頼らざるを得ないため「国産化が急務」(航空大手)とされ、官民で検討が進む。
ただ、廃食油確保は容易ではない。国内で現在発生する事業系廃食油は年約40万㌧。その多くは飼料や肥料、せっけんなどの原料として国内利用されてきた。ここに買い取り攻勢をかけているのが、シンガポールにSAF製造プラントを持つ再生可能燃料製造大手・ネステ(フィンランド)などの海外勢。輸出される廃食油量は、ここ数年で急増。21年度には約12万㌧に達した。
輸出価格も1年半で約3倍に急上昇。そうして国外生産されたSAFを今度は日本企業が高値で買うという悪循環が生まれつつある。さらに飼料や工業原料需要との競合で国内相場も高騰しており、廃食油の回収コストは増加の一途を辿る。危機感を募らせる関連業界からは「買い取り価格の一部を国が負担すべき」との声も上がっている。
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