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【2023年の中国経済はどうなる?】柯 隆・東京財団政策研究所主席研究員を直撃!

財界オンライン / 2022年12月27日 18時0分

柯 隆 東京財団政策研究所主席研究員

経済成長目標を大きく下回る可能性がある

 ─ 2023年の中国経済の行方をどう見通しますか。 

 柯 2022年の中国経済は、中国政府が当初のプランでは成長率目標を5・5%としていたわけですが、1―9月期の実際の成長率は3%でした。最終的に中国政府が何%と発表するかは分かりませんが、第4四半期もゼロコロナ政策を続けている現状を考えたら、2022年通年では3%を下回る可能性があります。 

 ─ これは1978年の改革開放政策以降、初めての低成長になりますね。 

 柯 1989年の天安門事件の後で主要7カ国(G7)が経済制裁を科したことがあって瞬間的に落ち込んだんですが、それを除けば、おそらく初めてだと思います。 

 中国経済の潜在成長率を考えた時に、わたしはだいたい5%くらいだと見るべきだと思います。潜在成長率は何かというと、労働、資本と生産性で成り立ち、労働力も資本もあると。ただ、生産性が悪くなっていて、これはゼロコロナ政策によるところが大きい。工場の稼働率が下がるわけですから、大きく経済成長目標を下回る可能性があると言っていいと思います。 

 では、成長率が大きく下がることによって、どんな不都合が出てくるのか。例えば、失業率が大きく上昇します。とりわけ今の中国では、16~24歳までの若年層の失業率が大きく上がっている。2022年の中で一番高い時には20%近くいきましたので、失業率が上がると、一般家計の可処分所得が下がるので、中国の場合は若年層といっても、結婚する人、あるいは結婚した人は大抵マイホームを手に入れるわけです。 

 それが失業したり、給料を大きく下げられてしまうと、住宅ローンが返せなくなってしまう。わたしは日本が30年前に経験したバブルの崩壊、不動産バブルの入り口に中国が入ったと言っていいと思います。

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愛国主義の罠にはまった…

 ─ 中国も不動産バブル崩壊の入り口に入ったと。これは大変な影響になりますね。 

 柯 このように2022年を振り返ってみて、2023年の中国経済がどうなるかですが、一つの大きなポイントはゼロコロナ政策を続けるのか、否かということです。 

 ─ 今は中国政府のゼロコロナ政策に中国国民が不満を表明していますよね。これは従来の中国政府ではありえなかったと思うんですが。 

 柯 はい。つまり、今、習近平政権にとって難しい判断を迫られています。仮にゼロコロナ政策を転換した場合、これから12月、1月になってどんどん寒くなる。冬の乾燥でコロナウイルスが活発化しかねません。そうなると、これから爆発的にコロナ感染者数が増える可能性がある時期だということです。 

 そのタイミングで転換してしまった場合、共産党内部からも、転換したのは間違いだったのではないかという批判が起こりかねません。では、ゼロコロナ政策を続けるべきかと言ったら、長い間ロックダウン(都市封鎖)されて、これだけ多くの市民がこれ以上耐えられないと言っているわけですね。 

 ─ これは本当に難しい選択、判断になりますね。 

 柯 今はテレビをつけるとサッカーのワールドカップが開催されていますけど、海外では誰もマスクなどつけずに盛り上がっています。 

 それなのに、なぜ、自分たちだけが自国に留まって我慢しなければならないのか。そのギャップの差がマグマというか、ガスとなって溜まりつつあり、何かあったらドカンと爆発しかねない状況になっています。それが各都市での抗議デモとして表れているのではないでしょうか。 

 ─ これは中国政府も国民を抑えられると思っているわけですか。 

 柯 いや、上海だけでなく、中国各地で抗議デモが行われていますからね。結構危険な状態に近づいていると思います。 

 わたしが思うのは、もう少し温かい時期にゼロコロナ政策を解除しておけば良かったんだけれども、今更何を言っても遅いですよね。そういうことで、習近平体制はある種のジレンマに陥っているのだと思います。 

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 ─ まさにジレンマだし、緊張感が漂う時ですね。 

 柯 しかも、中国はまだ集団免疫ができていません。仮に国産ワクチンの効果がないのであれば、PCR検査につかったお金をファイザーなどの海外製ワクチンを輸入してくればよかった。輸入したワクチンを高齢者に優先して接種をすすめていれば、今の結果は多少なりとも変わったと思います。 

 結局、これは愛国主義の罠にはまったと言ってもいい。愛国主義とは何かと言ったら、国産ワクチンでなければダメだとこだわりすぎた。でも、コロナの話は科学の話ですから、国産だろうが、輸入ワクチンだろうが、収まればそれでいいじゃないですか。習近平体制が国産ワクチンにこだわったことが、自分たちの首を絞めることになったのだと思います。 

 ─ 日本のように国産ワクチンをつくれない国も問題ですが、愛国主義の罠というのは考えさせられる話ですね。 

 柯 全ての対応が遅すぎますよね。これからの不安要素を考えると、10月の共産党大会で習近平氏は異例の3期目に突入しました。ここで新しい執行部の人事が決まったわけです。ただし、新しい国務院(政府に当たる)の人事が決まるのは2023年3月の全人代(全国人民代表大会)です。 

 そうすると、現在は4カ月間ほどの政治空白が生まれています。つまり、3月まで新しい政策は決められない。この政治空白の大きさをいかに乗り切ることができるかが、今の習近平氏に問われていると思います。 

 ─ では、そうした状況を踏まえた上で、日本はどのように中国に向き合うべきだと考えますか。 

 柯 もちろん、日本の経済人はチャイナリスクを知っておかなければならない。とはいえ、日本にとっては中国への経済の依存度は高いわけですから、今からゼロチャイナの時代に戻すことはできません。ウィズチャイナを続けながら、どう経済活動を維持していくかが、全ての経済人に問われています。 

 日本企業にとって、中国という大きなマーケットを手放すことはできません。インドが急成長していると言っても、いきなり中国に代わるマーケットになるわけではありません。経済安全保障にかかわるようなところは守り、それ以外に押さえるべきところは押さえていって、各企業それぞれが中国との向き合い方について考えていくべきだと思います。

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