JTB・髙橋広行会長が語る2023年 「傷付いた観光インフラをどう立て直すかが課題に」
財界オンライン / 2023年1月20日 18時0分
─ 旅行業界はムードが変わりつつあります。JTB会長で日本旅行業協会の会長も務める髙橋広行さんは22年をどのように総括しますか。
【国土交通省】旅行需要の反動減を懸念 「全国旅行支援」の縮小継続
髙橋 22年はツーリズムの復活再生に向けてスタートラインを切った年です。約2年半の間、国内、海外、訪日旅行が全て停止するという、過去旅行業界の歴史にない、八方塞がりの状態に陥りました。
しかし、10月より水際対策が大幅に緩和され、国内旅行喚起策である「全国旅行支援」も始まりました。加えて円安の影響もあり、訪日インバウンドが急速に増えており、まさに回復軌道に乗りかけている状況です。
─ 一方で新たな発見につながったことはありますか。
髙橋 本業の旅行事業が停止しても、われわれは生き延びる必要があります。代表的な例として、ワクチン接種事業など長年旅行業で培ってきた経験やノウハウなどを生かした、旅行業以外の事業が伸びたことです。
接種の際、必要な受付・斡旋、運営、ホスピタリティなどの内容が、われわれの持つノウハウと合致しました。新たな発想と取り組みができたことは、業界全体にとっても大きな財産になるのではないかと思います。
─ 23年の業界の見通しを聞かせてください。
髙橋 2年半以上の間、各社は様々な経費を抑えざるを得ませんでした。今後マーケットが回復していくにあたり、経費抑制により観光を支えるインフラそのものが弱くなってしまったのが現状です。その際たるものが人手不足です。航空便も減便し、貸切バス事業者も運転手さんを再度雇用する必要があります。
特に旅館はサービス対応をする人手不足で、客室はあっても十分な受入ができず、悔しい思いをされています。まずはこの傷付いた観光インフラをどう立て直すかが喫緊の課題です。
─ 地方創生とも絡む。
髙橋 はい、訪日インバウンドは急速に伸びていますが、中国からの観光客は未だ停止している状況です。この期に新たなマーケットを開拓し、回復時に更なる拡大を図ることが地域活性化に繋がると考えています。
─ デジタル化を絡めた見直しも必要になりますね。
髙橋 当面はウィズ・コロナ対策として、その後はSDGs対策を進めるためにも、観光施設の決済や予約システムのデジタル化抜きでは世界との競争に勝てません。しかし、ほとんどの観光施設では今でも現金と手作業頼みです。どこも投資余力がないからです。当社もそのような課題解決のお手伝いをしたいと考えています。観光立国を標榜する政府に対しても、地域活性化への側面的な支援を継続してお願いしています。
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