【新春インタビュー】経団連・十倉雅和会長「物価と賃金の好循環に持っていく絶好の機会」
財界オンライン / 2023年1月18日 11時30分
─ 経団連会長の十倉雅和さん、失われた30年と言われる中で、足元の物価上昇をいかに賃上げにつなげるかが問われていると思うんですが。
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十倉 われわれは自由主義経済の世界を生きる企業として、「賃金決定の大原則」があります。それは、物価や経済環境、自社の財務力等を総合的に考慮したうえで、最終的には労使がよく話し合って会社が決定すると。賃金は一律に決めるものではないという大前提です。
そのうえで、今回一番重要視する必要があるのは物価高だと考えています。おそらくこの30年、日本企業はインフレ下で賃上げをした経験がほとんどないと思います。今の物価高の主な要因はコスト・プッシュによるものですから、これを一時的なもので終わると想定して、インフレ手当や賞与・一時金の支給での対応も、選択肢としてはありえると思います。
ただ、可能な企業には、ベースアップを伴う賃上げで経済を回していく方法を、是非考えていただきたいと思っています。
─ 2023年はそこができるかどうかの正念場ですね。
十倉 ええ。現在の物価上昇を一つの契機として、物価と賃上げの好循環を実現し「構造的な賃金の引き上げ」につなげていく絶好の機会で、ポジティブに考えていくべきだと思います。
─ 隣国・中国との関係はどのようなスタンスで臨むべきだと考えますか。
十倉 世界は中国なしでは成り立たず、中国もまた世界なしでは生きていけない。これに尽きると思います。それほど、中国のサプライチェーン(供給網)は、世界経済にしっかり組み込まれています。
政治信条や価値観と、経済・社会が一体となって揺れ動いている時代にあって、昨今の米中対立の激化と相まって経済安全保障の重要性が一段と増しています。機微技術に関しては米中で別々の供給網を構築する局面もでてくるかもしれませんが、オール・オア・ナッシングではない。現に米国もヨーロッパも中国の経済としっかり向き合って、上手にやっています。
一部で対立したとしても、両国の経済活動の深化・拡大はもとより、例えば、地球温暖化や少子高齢化など共通の課題解決に向け、協調できるところもあります。われわれ日本も、競争と協調を使い分けてやっていくことが大事ですよね。
─ 引っ越しのできない日中関係ですから、基本的に共存共栄だと。
十倉 ええ。中国はアジアの繁栄にとって大切で欠かせない隣人です。対話が途絶えることが一番良くない。中国に限らず韓国もそうですが、政治も経済界も、スポーツも、文化・芸術も、あらゆる層で対話を続けていくことが大切だと思います。
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