【わたしの一冊】 『考えよ、問いかけよ「出る杭人材」が日本を変える』
財界オンライン / 2023年1月22日 11時30分
偏差値エリートを量産する日本に真の高等教育はない
著者は1936年生まれの86才の内科医師である。しかし、単なる医師に止まらず、日本学術会議会長、福島第一原子力発電所事故・国会事故調(NAIIC)の委員長を務めた。
「小医は病を医す 中医は人を医す 大医は国を医す」との言葉に当てはめれば、著者は文字通りの「大医」である。
「大医」はそのメスで、日本の「高等教育の弱点」と「科学技術政策の貧困」と「規制の虜」と呼ばれる規制される側が規制当局を制御する逆転現象に切り込む。日本の教育の過誤として「課題を発見し、それを解決できる人材を育成する視点に欠ける」ことを指摘する。
知識だけを詰め込み、自分の頭で考えられない偏差値エリートを量産する日本には、真の高等教育はないのだ。
知識を用いて議論し、考えることで叡智を獲得するのが教育であるのに、日本の大学は海外の一流大学に50年遅れていると言う。
政策と行政の貧困により、日本の科学技術研究は凋落の一途だ。大医の見立てではその是正には「科学リテラシーを持つ政治家」が不可欠で、そのためには「1票の格差」をなくした人口比例選挙が必要と喝破する。
アメリカは1964年にこれを達成し、2000年には、技術開発と知財をセットにして、デジタル時代の国家戦略を宣明した。日本は半導体研究で、アメリカはおろか、韓国、中国、台湾に20年以上の後れを取った。
知財力を取り戻すには「出る杭人材」による政治の大転換と人材流動性が不可欠であると筆者は書く。既得権にとらわれた志が低く、責任感のない日本型エリートに任せては日本は滅亡する。
本書は次世代の若者に捧げた「出る杭人材」を論じながらも、日本の現状を全否定する革命提唱論であり、若者への日本出奔論である。
「大医」の国家転換の処方箋に私も深く同意する。
『ガリア戦記』 冨山和彦・日本共創プラットフォーム社長の「今週の一冊」
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