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「共生の思想」を持つ日本、いかに世界で存在感を発揮するか?【私の雑記帳】

財界オンライン / 2023年2月12日 11時30分

問われる日本の基本軸

 2023年(令和5年)、日本の生き方やポジションに世界の目が集まる。

 今年、日本はG7(先進国7カ国首脳会議)の議長国になり、その手綱さばきが注目される。

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 コロナ禍、ウクライナ危機はまだ続く。米中対立も強まる中、本来、『共生の思想』を持つ日本が、世界次元でどう存在感を発揮していくのか、文字どおり国の基本軸、真価が問われる。

 岸田文雄首相をはじめ、政治、経済、行政、教育、そして社会各領域のリーダーには使命感発揮と同時に、その覚悟が求められる年になりそうだ。

 世界経済は、今年は後退するという見方が強い。コロナ禍などの供給制約で資源・エネルギー価格が急上昇。世界的にインフレが進み、これを抑制しようと、各国とも金利上げに動き、これが景気後退を招く一大要因となっている。

 その中で、日本の相対的地位向上である。


日本が世界一の成長?

 日本が、〝世界で一番成長する国〟になる? コロナ禍、ウクライナ危機で世界景気は後退、その中で日本の今年の成長は年率1・0%成長で〝世界一〟になる見通し。

 米国や欧州など他の先進国、さらに中進国や発展途上国などと比べて、〝成長しない国〟とされてきた日本の相対的な地位向上である。それだけ、世界経済が低迷、ないしは景気後退するということであり、素直には喜べない。ここは気を引き締め直していかねばならない時だと思う。

 世界銀行は1月10日、2023年の世界経済の見通しを半年前の前回見通しの3.0%成長から1.7%に引き下げたと発表。

 世界的にインフレが進み、それに各国が利上げで対応し、世界経済は後退局面に入るという見通し。

 米国の成長は0.5%、ユーロ圏は0%成長と先進国経済は停滞。半年前と比べ、欧米共に1.9㌽の下方修正で急激な落ち込みとなっている。

 相対的に、日本の引き下げ幅は0.3㌽と小幅で、日本の成長率は1.0%という水準。

 21世紀に入って、すでに四半世紀が経つ。前世紀末の〝失われた10年〟がいつの間にか、〝失われた30年〟になった現実を直視し、潜在力発揮の年にしたいものだ。

 相対的な〝成長率の高さ〟に甘んじているわけにはいかない。


金川千尋さんの粘り強さ

 信越化学工業の会長・金川千尋さんが亡くなった。1926年(大正15年)生まれで、96歳の大往生だった。

 同社中興の祖であり、塩化ビニール樹脂で世界一の座に同社を押し上げ、半導体材料のシリコンを高収益事業に育て上げた功績は大きい。

 勝負は粘り強く─。自分たちが勝負するのはこれだと決めたら、勝ち抜くために、真剣勝負を挑み続ける。金川さんは1990年(平成2年)社長に就任、2010年(平成25年)会長という足取り(追悼・金川千尋さんの欄を参照)。

 塩ビといえば、ひと頃、化学各社はどこも取り扱っていた。売上高で日本一の三菱ケミカルも三菱化成工業時代に米モンサントと合弁で手掛けていた。

 高度成長期に過剰供給となり、また汎用樹脂ということで、好不況を繰り返し、撤退するところが続出。

 金川さんの経営者としての凄さは、汎用品の塩ビを高収益事業に創り上げた─という所にある。

 市場も金川経営を高く評価。時価総額は6兆7302億円強(1月13日現在)で、産業界全体で16位。化学業界では断トツ。2位の富士フイルムホールディングス(3兆9358億円)の倍近い水準。

 米南部での原料地立地、そして中南米を含む世界の需要先をにらむ上で、米国に拠点(完全子会社のシンテック社)を置くという経営判断が同社繁栄の元をつくった。


人と人のつながりの中で

 高成長の背景には、経営者としての好判断・決断があったわけだが、金川さんは、常々、「わたしは(前社長の)小田切新太郎さんに支えていただきました」と謙虚に語っておられた。

「わたしは仕事をする上で、小田切さんをはじめ、素晴らしい方々に恵まれ、本当に幸せでした」

 信越化学は創業家・小坂家が信越地区の豊富な水力による電気をエネルギー源に興した化学会社。小坂家からは小坂善太郎氏(元外相)や小坂徳三郎氏(元信越化学社長、運輸省=現国土交通相を歴任)を輩出。その小坂家の信任が厚く、化学界の紳士とされたのが小田切新太郎氏。

「困難な仕事から逃げずにやってきた」と金川さんは自らの人生を述懐していたが、こうした生き方を小田切氏はじっと視ていたということであろう。創業家から、小田切氏へ、そして金川さんを経て、今の斉藤恭彦社長へと経営の根本軸が受け継がれている。金川さんの一生を見るとき、改めて、人と人のつながりの大切さ、そして妙といったものを感じさせられる。


地雷除去の仕事に……

 前向きに生き抜く─。確かに人の世は厳しい事、悲しい事、辛い事も少なくない。しかし、困難だからと逃げるわけにはいかない。要は人と人のつながりを広げ、問題解決の知恵をどう捻り出していくかということである。

 ウクライナ危機を見ても、人の世から戦争はなくならないものだとつくづく思わされる。しかし、その現実から目を背けず、自分たちで出来る所からやっていこうという前向きの人たちがいる。

 紛争地での地雷処理という地道で危険度の高い仕事に取り組む人たちもそうだ。

 IOS社長の今井賢太郎さん(1973年=昭和48年生まれ)。

 2016年(平成31年)に起業。もともとは、〝きつい、汚い、危険〟の3Kの仕事をロボット活用などで自動化しよう─という趣旨でスタートした。

 人と人の出会いは面白いもので、今井さんは人工衛星制御の専門家、狼嘉彰氏と出会う。

「父が狼先生と知り合いだったということもあり、付き合いが始まりました」

 狼氏と行動を共にしながら、新しくJICA(国際協力機構)との付き合いが始まる。

 JICAはカンボジアでの地雷除去作業も手掛けており、「一緒に仕事をしてみませんか」と誘われ、今日に至っているという。

「まず金属探知機で、土の中に埋まっているボールペンの先ぐらいの金属を探し出すんです。ピピっと鳴ったところに、今は手作業で、しゃがみ込んで地雷除去をやっています」

 作業中の爆発事故も少なくない。カンボジアの場合、内戦時に地雷が埋められて30年以上も経つので、雨水などで地中の地雷も流され、「必ずしも上を向いていないので、非常に神経を使います」という。

 人の〝業〟の深さを感じながら、己れの仕事に今日も打ち込んでいる人たちがいる。

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