【経済産業省】機密情報取り扱い資格制度・創設に向けた法案は先送りへ
財界オンライン / 2023年2月16日 15時0分
経済安全保障に関する機密情報の取り扱い資格制度「セキュリティー・クリアランス(適正評価)」の創設に向けた経済安全保障推進法改正案を巡り、政府が1月23日に開会した通常国会への提出を先送りするとの観測が強まっている。個人情報保護への懸念や、制度設計に時間がかかっていることが理由。適性評価制度がないままでは、米欧の共同研究などに参加できず、日本の国際競争力がさらに低下する恐れがある。
適正評価制度は、機密情報へのアクセスを認める公務員や民間人を審査し、資格を与える仕組み。取り扱える人物を限定することで、人工知能(AI)や量子など軍事転用可能な先端技術の流出を防ぐ。2014年に施行した特定秘密保護法では、外交、防衛、スパイ活動防止、テロ防止の4分野を特定秘密に指定。特定秘密を扱う公務員を主な対象に適正評価の資格を付与している。
日本を除く先進7カ国などの適正評価制度は、経済分野も対象としている。日本政府関係者によると、こうした国々が発注する政府調達や、民間による共同研究などに日本の事業者が参加できない事例が散見されるという。日本に適正評価制度がないため、情報の保秘が徹底されないとの懸念が背景にある。
高市早苗経済安保担当相は「適性評価制度の早期導入が必要だ」と訴えるが、官邸の腰は重いままだ。経済安保に精通した与党議員は「統一地方選を控える中、借金の有無など個人情報の保護に懸念がもたれるようなややこしい法案をやりたくないのが(官邸の)本音だろう」と解説する。
岸田文雄首相とバイデン米大統領は今年1月の日米首脳会談で、人工知能(AI)や量子など経済安保の分野で協力を深めることを確認した。ただ、こうした合意があっても、適正評価制度が存在しないが故に、日本が触れられる情報や人的交流は限られる。
技術が日々進化する中、日本が経済安保で世界をリードできるか。政府の姿勢が問われる。
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