【ずいひつ】DeNA川崎ブレイブサンダース・元沢伸夫社長が語る「バスケットを地域経済のハブに!」
財界オンライン / 2023年5月4日 11時30分
試合では最後の3秒まで何が起こるか分からない。手に汗握る興奮を感じれるのはスポーツの魅力ですが、バスケットは僅か3秒で試合がひっくり返るほど、息を飲む瞬間の連続が続くスポーツではないでしょうか。
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バスケBリーグの「DeNA川崎ブレイブサンダース」は東芝からDeNAに運営が移って5年目を迎えました。その間、プロ野球の横浜DeNAベイスターズの運営も経験してきた私が常に意識してきたのが〝地域も潤う〟仕組みづくりです。
そもそもバスケは最も伸びしろのあるスポーツになります。というのも、日本全国の競技人口では男子に限れば野球やサッカーに見劣りしますが、女子も合わせるとバスケが首位。女子にも人気のスポーツなのです。
しかしながら、バスケは他のスポーツと比べてもプロ化が遅れたという歴史があります。野球の歴史は約100年、サッカーは約30年、バスケはプロリーグが統一されて7年しか経っていません。ビジネスという面では出遅れているのです。
ただファン層を調べてみると、野球は60代、サッカーは40~50代が最も厚いのに対し、バスケは20~30代と若い層がメイン。バスケは女性にも人気で若い層のファンも多い。この潜在力を生かさない手はありません。
そして、今の若い層がスポーツの試合を観戦する〝入口〟は従来とは大きく違ってきています。「バスケの試合を観る」という動機はもはや働かず、「YouTubeで見た選手がバスケの試合をするから観る」という動機が行動に結びつくのです。
この変化をいち早く掴み、当社では早くからYouTubeやTikTokに動画を流し、〝選手のキャラクター〟を前面に押し出すデジタルマーケティングに舵を切りました。今ではTikTokのフォロワー数は読売巨人軍に次ぐ規模となり、YouTubeのチャンネル登録者数は約15万人と、Bリーグ・Jリーグのどのクラブよりも多くなりました。
こういったバスケのファン拡大と共に大切な取り組みが冒頭で申し上げた「地域も潤う」という視点です。プロスポーツは地域に根差していかなければ決して成長することができません。そこで当社が手掛けたことが徹底した〝地産地消〟です。
クラフトビール、お菓子、お弁当、グッズ、LED照明に至るまで、できる限り地元企業とのコラボレーションを図りました。例えば、クラフトビールは川崎市内のクラフトビール製造会社を訪問し、当社からコラボを持ちかけました。また、かつて川崎は海苔の一大産地でした。そこで川崎の海苔を使った「カワサキのり弁当」を地元のホテル・レストランを運営する会社と共同開発しました。
どちらも大ヒット。クラフトビールに至ってはコロナ禍で2000人という入場規制がある中でも1日で600杯が売れました。どれも手間暇がかかる取り組みになりますが、手間暇をかけたからこそ、お客様は価格が多少高くてもストーリー性を感じて手に取ってくれるのです。このようにスポーツは「地域経済のハブ」になれるのです。
今は社長就任当初から掲げている新アリーナ「エキサイティング・バスケット・パーク」構想の実現に向けて奔走中です。プロ化が遅れたバスケだからこそ、新しいチャレンジがどんどんできます。現場からも様々なアイデアが飛び交う日々です。
先日のサッカーのW杯での日本代表の活躍は日本人の心を虜にしました。バスケにもその力はあります。地域を巻き込みながらバスケの存在感を高めていきたいと思っています。
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