「日本再生はファンダメンタルズの再構築から」日本総合研究所会長 寺島 実郎
財界オンライン / 2023年2月28日 7時0分
日本経済は転換点に立っている
─ コロナ禍、ウクライナ危機が続く中、2023年の経済をどのように予想しますか。
寺島 今年のキーワードは〝77年〟です。明治維新から敗戦まで77年、戦争に負けてから去年までが77年でした。そして、今年から77年後といったらちょうど2100年です。
─ 要するに、22世紀に入ろうとしている年ですね。
寺島 ええ。つまり、今までの77年と、今年から始まる未来圏の77年を視界に入れて物事を考えてみようというのが、一つのポイントです。
今、日本経済は転換点に立っている。例えば、世界のGDP(国内総生産)に占める日本の割合は、1994年の17.9%をピークに減少し、2022年には4%台になるところです。
日本の一人当たり名目国内総生産(GDP)は、昨年ついに台湾に抜かれました。すでにシンガポールや香港に抜かれ、今度は韓国に抜かれそうな局面に来ています。2010年に中国にGDPで抜かれた時もそうでしたが、こうした事実は経済成長時代を生きてきた多くの日本人の潜在意識の中で、大きなショックだったと思います。
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─ それが以前から寺島さんが指摘する日本経済の埋没ということですね。
寺島 そういうことです。問題意識を持っている人でしたら分かると思いますが、今の日本は世界における埋没感が鮮明です。そのことに気づいた経済人の焦燥感といったら、大変なものになってきました。
今までアベノミクスで株価が高くなり、数年前まで円安で輸出産業にとっては結構だと言っていた人たちが、日本の埋没感を感じて動揺を隠せなくなってきています。
昨今の円安で日本の通貨の価値がこの10年で半減している事実に驚き、国債の半分は日銀に持ってもらって何とか持ちこたえていますが、それに対する不信感が指摘されたら一気に暴落しかねないような状況になりつつあることに勘づき始めているわけです。
─ これは真っ当な危機感ですね。
寺島 ええ。わたしは誰が悪いとか、表層的なアベノミクス批判をしているわけではありません。これが日本の現実であり、今、責任ある立場にいる真っ当な人たちに必要なことは、事実を事実として見つめて、なぜこうなったのかという理由を筋道立てて考えること。そして、再生に向けて、どんな認識と歴史観をもって立ち直るかが、ものすごく問われている。そういう年なんだと思います。
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─ では、寺島さんはどういう形で日本再生を果たせばいいと考えますか。
寺島 やはり、日本は今までのようなものづくり国家や、工業生産力モデルの優等生として酔いしれているようでは何も変わりません。
その鍵は、イノベーションとファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)だと思います。特にこれから日本をつくり直す時のキーワードは、ファンダメンタルズだと思います。
それは何かと言ったら、以前から申し上げているように、食と農であり、医療・防災です。
このファンダメンタルズをしっかり重層的に厚くし、安定化しておくことが、国家としての耐久力のベースになると思います。これらの整備には時間がかかるかもしれませんが、日本が独立した国家として、必ずやらざるを得ない大事なことだと思います。
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