三菱重工が国産旅客機開発から撤退 「型式証明」の壁を超えられず
財界オンライン / 2023年3月3日 11時30分
「多くの皆様からご期待、ご支援をいただいていたが、開発中止の判断に至ったことは大変残念」と厳しい表情で話すのは、三菱重工業社長の泉澤清次氏。
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2023年2月7日、三菱重工は国産ジェット旅客機「三菱スペースジェット」(MSJ)の開発中止を発表した。
20年10月には「一旦立ち止まる」(泉澤氏)として事実上、開発を凍結していたが「開発を再開するに足る事業性を見出すことはできなかった」。「YS―11」以来、約半世紀ぶりの国産旅客機開発で、約15年の歳月と約1兆円をかけたが撤退することになった。
撤退の要因として泉澤氏は4つの理由を挙げた。
開発の長期化で技術的競争力が低下したこと、海外パートナーからの装備品調達が難しくなっていること、北米の規制緩和が進ます、現在開発中の機体が市場に適合しないこと、さらに「型式証明」(TC)の取得にはさらに巨額の資金を必要とすること。
このTCは機体の設計が安全性の基準を満たしているか、国が審査・確認する制度だが、これが大きな壁となった。「高度化した民間航空機の型式認証プロセスへの理解不足があったことは否めない」と泉澤氏。
当初は日本人技術者で進めてきたが開発は難航、途中から他社で経験を積んできた外国人エキスパートもチームに加えてTC取得を目指したが実現できなかった。
今後はMSJ開発で得た知見を、航空機事業に生かしていきたいとするが、日本として航空機産業を新たに起こそうという構想は頓挫。三菱重工は米ボーイングなどの主要部品を手掛けてきたが、完成機製造は次元が違ったということ。
敗戦により国産航空機をつくれなくなった日本にあって、企業としてのツメの甘さが露呈した形となってしまった。
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