東京電力が6月から3割値上げ 柏崎刈羽原発の稼働を前提に
財界オンライン / 2023年2月24日 18時0分
東京電力ホールディングスは、国の認可が必要な「規制料金」の引き上げを経済産業省に申請した。
上げ幅は平均29.31%で6月からの実施を見込む。対象契約は家庭向け契約の3分の2程度の1千万件に上る。料金算定の前提には柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を織り込んでおり、想定通りに稼働できるかどうかが経営状況を左右しそうだ。
同社の値上げ申請は東日本大震災後の2012年以来11年ぶりとなる。燃料価格の高騰と円安が収益を圧迫しているため。申請した月間料金は、電力使用量が260キロワット時の標準家庭で、現在の9126円より2611円高い1万1737円となる。
電力各社は「燃料費調整制度」に基づき、燃料費の上昇分を一定上限まで利用者に価格転嫁している。東電では、昨年9月に上限に達しており、22年度の自己負担額は1千億円に上る見通し。これまで未公表だった23年3月期連結業績予想では、経常損益が過去最大の5020億円の赤字(前期実績449億円の黒字)に、純損益は3170億円の赤字(同56億円の黒字)に転落するとした。
「大変厳しい見通しであるが、引き続き、徹底的な合理化と、お客様のご負担低減にもつながる節電・省エネを進めることで収支改善につとめていく」(小早川智明社長)
収支改善に向けた最大の焦点は柏崎刈羽原発の再稼働だ。規制料金の料金算定にあたっては、柏崎刈羽原発の7号機が10月、6号機(同)が25年4月に再稼働すると織り込んだ。再稼働すれば、料金原価が年間3900億円減り、値上げ率で7%弱、1キロワット時当たりで2.1円の抑制効果がある計算だ。
ただ、同原発は、東電のテロ対策設備を巡る不祥事で、原子力規制委員会が事実上の運転禁止命令を出しており、地元同意も得られていない。値上げ申請時の記者会見では、想定通りに再稼働できなかった場合の対応策に関する質問が相次いだが、小早川氏は、「安全・安心の両面から改善に努めていきたい」と述べるにとどめた。
規制料金を巡っては、北海道、東北、北陸、中国、四国、沖縄の各電力も平均28~45%の引き上げを実施。検討を表明していた7社の申請が1月後半までに出そろった。一方、原発をすでに再稼働している関西電力や九州電力は値上げを申請していない。原発の稼働状況で電力各社に差が出ているのが現状だ。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
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