コトラ・大西利佳子社長が語る「金融機関に求められる 『人的資本経営』への転換」
財界オンライン / 2023年3月3日 18時0分
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今、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出す「人的資本経営」が様々な業界で重視されていますが、中でも金融機関が抱える課題は大きいと見ています。
私自身、1997年に日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)に入行し、日本の金融危機を体験しましたが、今の日本の金融機関は当時からの「影」を引きずっているのではないかと感じます。
特に銀行の経営者の中には、当時社会に迷惑をかけたという意識があり、自らの報酬が高いとは謳いたくないという思いが強いのではないかと思うのです。経営者の報酬が頭打ちになると、その会社の給与水準に「キャップ」がかかることになります。
かつてあった「総合職」、「一般職」の名残もあって、その金融機関全体の給与水準の平均を出しても、実体がわかりづらいという問題もあります。
さらに言えば、日本の官僚の報酬が低く、柔軟性に欠けていることも、金融機関に大きな影響を及ぼしていますし、金融機関の姿勢は広く日本の産業界に影響します。
また、メガバンクなど大手と地域金融機関とでは課題感が違っており、特に地域金融機関は日本の人口減少の影響を強く受けているのです。内容がネガティブで開示に躊躇する地域金融機関も見受けられます。ただ、開示しないことで投資家の視線も厳しくなりますから、腹を括って開示する必要があります。
世の中で「感動」が何から生み出されるかというと、多くが「マイナスからプラスへの浮上」というギャップです。順調な話はドラマにならないわけです。その意味で、地域金融機関にとってはギャップをつくりやすい環境にあると言えます。
自らのありたい姿を明確に設定できるかどうかは経営者のリーダーシップ次第であり、今まさに求められているものです。
金融機関は旧大蔵省、金融庁に監督されてきていることもあって、「横並び」意識が未だに強く、自ら決めることが得意ではありません。
ただ、金融庁はこの課題を認識して、金融機関に自らの判断で物事を決めることを求めています。
2022年8月には内閣官房が「人的資本可視化指針」を出しましたが、これは原則主義で、細かく定められていません。企業に自由度が与えられている形ですが、企業側からは、もっと細かく定めて欲しいという声が出ています。
いずれにせよ、人的資本重視の流れは不可逆です。これまでは人を「コスト」と捉えて、これをいかに減らすかを意識する企業が多かったわけですが、今は給与を上げ、教育するなど人に投資をすれば、それが利益向上につながるという考え方になりつつあります。
重要なのは、いかに1人当たりの付加価値額を高めていくかです。そのためにDXによる効率化などを進めると、現状の仕事を維持したい人達からは抵抗も出ますが、新しい仕事を生み出していかなければ企業の成長はないわけです。若い人達が定着するかどうかも、ここにかかっています。
日本人は真面目な人が多いですから、経営者が本気で変わっていく意思を示せば、変わっていくと思います。その意味で経営者の役割はますます重要だと言えます。
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