お披露目は上々も前途多難の植田日銀体制
財界オンライン / 2023年3月8日 20時0分
次期日銀総裁候補の植田和男氏は2月下旬、国会同意に向けて臨んだ衆参両院での所信聴取を波乱なく乗り切った。
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現総裁の黒田東彦氏が続けた10年間の大規模金融緩和策について「メリットが副作用を上回る」と評価し、継続姿勢を示す一方、国債を大量に買い入れて長期金利を実勢より大幅に低く抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)が債券市場の機能不全など「副作用」を招いていることは認めた。
また、大量に抱え込んだ上場投資信託(ETF)について「どうしていくかは大問題」と懸念を示し、市場との対話を巡っては「(金融政策運営の)考え方を平時から平易に説明することでサプライズを最小限に食い止めることは可能」と語った。
だが、新体制の前途は多難。日本経済は2022年10―12月期で2四半期ぶりのプラス成長(年率換算で前期比実質0.6%)だが、回復力は弱々しい。
市場ではYCCの撤廃時期が注目されている。長期金利の操作を止め、金融政策のターゲットを短期金利(現行マイナス0.1%)に絞る欧米中銀同様の伝統的な緩和手法に転換するのが最終ゴールだが、日銀内では「実務的にそう簡単ではない」との見方が強い。
急に歯止めを外せば長期金利が跳ね上がり、長期国債を多く保有する銀行や生保など金融機関に多額の含み損が発生する恐れがある。長期金利の急騰は先進国中で最悪の借金を抱える国の財政運営への影響も大きい。
進め方も難しい。本来は市場に事前に織り込ませた上で政策を修正するのが理想だが、修正を事前に示唆すれば投機的な国債売りを招き、日銀は新たに設定する上限内に長期金利を抑え込むために無制限の指し値オペなどで国債の大量購入を強いられかねない。
すでに発行残高の過半に達する長期国債の保有額がさらに膨らむ事態になれば、将来の緩和の出口をより困難にするジレンマがある。
米国など世界ではインフレが進む。金融政策を一歩間違えれば金利高騰、国債の投げ売りという事態を招きかねない。緊張感が求められる植田体制である。
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