【株価はどう動く?】大企業業績の好調、賃上げ、円安の3条件が揃えば日本は「脱デフレ」へ
財界オンライン / 2023年3月10日 20時0分
日本企業の賃金水準は底上げされるか?
欧米、特に米国ではインフレ率にほぼ応じて物価が上がっています。米国では高インフレになっているわけですが、そうなると生活者の生活費が上昇しますから、労働者は賃上げを要求します。企業は労働力を確保するために賃上げをし、その分を商品価格に転嫁するわけです。
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一方、未だに日本はデフレ状況の中にあります。企業がほぼ30年間、商品価格を据え置いてきました。その分、生活者は賃金が上がらなくても前年並みの生活ができ、人件費が上がりませんから企業は価格転嫁をする必要がありませんでした。さらに、長年価格を上げていませんから、企業、生活者ともに値上げへの抵抗感があります。
こうしたことから、日本は世界で最もインフレ率が低い国であり続けてきたわけです。これを、欧米型の賃金・物価スパイラルにしていかなくてはならないのです。これが実現できるかは、日本経済、株式市場の行方にも関わってきます。
ポイントは、23年3月期の大企業決算がどうなるかです。一部のデータによれば業績のいい企業、悪い企業は半々ではないかという予測もあります。業績がいいのは、おそらく海運や鉄鋼、商社といった、円安やエネルギー価格高騰の恩恵を受けたセクターだと見ています。これらの企業に共通しているのは、非常に配当が高いことです。
加えて、製造業の中からも業績のいい企業が出てくる可能性があります。円安によって輸出の状況がいいこと、さらには値上げ可能な状況になっていることが大きい。
さらに、日本がデフレを脱却するための必要条件は「賃上げ」です。物価が上がることのデメリットはもちろんありますが、メリットの方が遥かに大きいのです。日本がデフレを脱却する、あるいは金融市場が正常化に向かう上で、円安は大きなきっかけになります。
こういう話をすると、「経済が強い国の通貨が買われるのだから、円高の方がいい」と「悪い円安」を持ち出す人がいますが、経済や社会が正常な状態であれば円高がいいわけです。日本は「慢性デフレ」という重病の中にありますから、円安は「カンフル剤」のようなものです。
日本をデフレからインフレに向かわせる、つまり「物価目標2%」という適正なインフレに持っていく必要があります。そのためにも、23年3月期決算で業績のいい企業がたくさん出て、賃金を引き上げる動きが続くことが期待されます。
さらに今、「春闘」が行われていますが、日本の全産業で賃金の底上げが実現する可能性があります。目の前で物価が上がってきていますから、日本の生活者は前年と同じ給与では生活できなくなりつつあります。そこに向けて、大幅な賃上げを実行できるかが企業に問われているのです。
以上のように、大企業の業績がいいこと、賃上げが行われること、そして円安が続くことという3つの条件が整うのではないかと見ています。
そうなると、22年が日本経済のデフレの最後の年となり、23年は脱デフレの年となる可能性があります。早ければこの第1四半期に株価が底入れし、脱デフレを織り込む株高が、第2四半期から始まる可能性が出てきています。
日銀・植田新総裁で金融政策はどうなる?
そして4月8日に登場する予定の日本銀行新総裁の植田和男氏の下、デフレの象徴だった「マイナス金利」、「イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)」を修正することが、日本経済、金融市場が正常化する道になります。
マイナス金利、YCCをやめることは、表面的には金融緩和が終わって、引き締め、縮小に移るように見えますから、一時的に株価が下落するかもしれませんが、これは日本経済、金融市場が正常化に向かう過程における「痛み」です。
この痛みを乗り越えていく脱デフレ時代が23年から始まることになります。それを株式市場も、政治家も、国民も認識するようになるのではないかと見ています。デフレやゼロ金利、マイナス金利が異常なのですから。
日本は今後、デフレを脱して物価目標2%を達成する可能性が出てきますが、欧米はインフレが進み過ぎて抑えるのに躍起ですから、日本とは全く置かれている状況が違います。
20年から始まった、コロナ対策のための全世界的な大金融緩和は終わっていきますが、日本経済は最も遅いランナーで、インフレどころか、これからデフレを脱しようとしていますから、欧米がインフレ対策で金利を上げている間に、日本経済は脱デフレに向かいます。日本の金利も今後上がるかもしれませんが、1%がやっとなのではないかと見ています。
日本の長期金利が1%になると、デフレを脱却したという証明になります。日銀総裁の黒田東彦氏は23年1月20日、「ダボス会議」のパネル討論で「2%の物価目標は持続的かつ安定的に達成されていない。それが唯一の心残りだ」と語ったと報道されていますが、新総裁の植田氏は、この言葉を引き継ぐことになるでしょう。
消費者物価指数(CPI)が継続的に2%を上回るような経済状況にしようという金融政策に、時間をかけて取り組むはずです。10年間続いた金融政策を修正する上で、植田氏は適任ではないかと思います。
植田氏は国際的にも認められている経済学者で、信頼の置ける人物だと見られますが、政策については蓋を開けてみなければわかりません。中立的な政策を取るのではないかというのは衆目の一致するところだと思います。手堅い政策で物価目標2%を目指すのではないかと思います。
日本の株価は第1四半期、あるいは近く底入れし、脱デフレを日本の社会全体が認識した時から上昇を始めることになります。早ければ第2四半期、遅くとも第3四半期には、日経平均は3万円台を目指す展開になるものと予想しています。
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