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【ずいひつ】中﨑久雄・前神奈川県大磯町長が語る「政財界人や文化人の別荘地・大磯が目指すまちづくり」

財界オンライン / 2023年5月3日 11時30分

町長就任前の12年間は、3期続けて町長が1期で交代し、肝心な物事がしがらみにより進まず、「オリンピック町政」と揶揄されるほどでした。

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 私は前職が医師でしたので、次世代のため、この〝しがらみ病〟を治し、ぶれずに責任をとって進めていく政治が必要と思い、町長になる決断をして、以後、3期12年にわたり、調整運営の舵取りをしてきました。

 12年の間には、就任直後の東日本大震災や新型コロナウイルス感染症など、社会経済情勢の変化も含め、その対応は険しく、厳しく、苦しさもありましたが、信条でもある、常に皆さんの聲を聴き、〝一貫性と継続性〟を持ち、柔軟に対応する姿勢を貫くことで、むしろ困難に立ち向かう楽しさや面白みが勝り、あっという間の充実した12年間でした。

 また、継続性に関しては、町の将来や次世代のため、大きな課題である人口減少と少子高齢化対策に特に力を注ぎました。

 町の人口は、自然減・社会増(転入の人口が転出を上回ること)といった特徴があり、この傾向は今も続いています。

 町の財政構造を考えると、急激な人口減少や少子高齢化の影響は計り知れないため、緩やかな曲線や維持へと転換するための取り組みをすぐに始めました。

 まず、着手したのが、町内全域を保健師が出向く「あおしす24健康おおいぞ事業」や「アンチロコモ事業」などの高齢者の健康寿命延伸への取り組みです。また、子育て世代に対しても、県内でいち早く「保育料の第2子以降の無償化」や「朝の子どもの居場所づくり事業」をスタートさせるなど、住み続けたい、安心して住み続ける、定住触診への取り組みを行いました。

 しかし、定住促進だけでは、町の継続性や持続力を持つには十分ではなく、将来の自然増も視野に子育て世代を呼び込む転入促進の取り組みをいかに展開するか考え、力を注いだ取り組みの1つが観光事業です。

 従来の観光事業は地域経済の活性化に重きを置いたものでしたが、大磯を知り、訪れてもらう手段として、きらびやかではなく、町の環境や雰囲気にマッチし、町外に宣伝やアピールできる移住定住の視点を持って取り組んだことです。

 町には、先人から受け継がれてきた豊かな自然、歴史・文化、良好な住環境があり、実際に訪れ、体感してもらえば、必ず気に入り、その先の移住につながると確信していました。そのため、今まで生かしきれず、埋没していた歴史や文化などの地域資源を掘り起こし、町に呼び込むための魅力へと再生するため、旧吉田茂邸の再建や大磯港での賑わい交流施設の整備、西湘バイパス沿いの太平洋岸自動車道の延伸事業などを行ってきました。

 そして、集大成とも言える取り組みが、令和7年度の全面開園を予定する伊藤博文や大隈重信などが居を構えた一帯を再生する明治記念大磯邸園整備事業です。観光事業を移住定住への取り組みに転換し、地方創生へと繋げるため、私は国や県、関係各所に何度も訪れ、人間関係を築き、支援や協力をいただくことで、いずれも成し遂げることができました。

 まちづくりには際限はありません。やり残したこと、やるべきこと、「知進知退 随時出処」。進むべく時を知り、退くことを知り、いつでもそれに従う。

 私は自ら役目を終える決断をし、今後は、若い力に期待し、違う立場から、さらなるまちの発展を見守ってまいります。

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