欧米で起きた金融機関の危機 日本でも銀行への悪影響を懸念
財界オンライン / 2023年4月5日 18時0分
破綻した米SVBと地銀の共通点は?
米中堅銀行、シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻をきっかけにした金融不安の波は欧州に飛び火し、国際金融危機前夜の様相。背景には、欧米の中央銀行がインフレ退治を目的に金融引き締めを加速させた結果、カネ余り時代が一気に終焉し、銀行を取り巻く経営環境が激変したことがある。
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日本政府は「我が国の金融機関は総じて充実した流動性や資本を有しており、金融システムは総体として安定している」(官房長官の松野博一氏)と強調するが、植田和男氏が総裁に就任した日銀が異次元緩和の修正に舵を切れば、地銀を中心に苦境に陥るケースが出かねない。
邦銀の足元の状況は欧米とは一線を画しているように見えるが、多くの地銀はSVBと似た収益構造にあり、楽観できない。メガバンクも外資含み損が膨らんでいるが、他の事業でカバー。だが地銀は資金需要が乏しく貸し出しが伸びない中、国内外の債券投資に収益を頼ってきたため、外債含み損のダメージはメガ以上に大きい。
今後の焦点は日銀の異次元緩和の修正、利上げによる金利リスク。地銀の日本国債や地方債などの保有額は、外債と比較にならないほど大きく、日銀が長短金利操作(YCC)の撤廃も含む金融政策の修正に踏み切れば、金利が上昇(債券価格が下落)して、多額の含み損を抱えかねない。
約9割の地銀は「国内基準」を採用しており、会計ルール上は含み損がいくら増えても自己資本から差し引かれることはないとは言え、情報開示は必要で、自己資本に比して含み損が過大になれば、信用不安の引き金になりかねない。
ひとたび信用不安に火が付けば、集団心理が働いてパニック的な預金引き出しが殺到する恐れも否定し切れない。
これまで銀行は短期で調達して、長期で運用してきたが、今は逆ザヤに陥っている。民間への資金供給が絞られる「貸し渋り」の懸念も出てくる。不安心理をどう抑え込むか。
日銀が政策を修正するだけで金利が跳ね上がる懸念があり、植田新総裁は難しいカジ取りが迫られることになる。
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