【経済産業省】統一地方選控え、岸田政権がエネルギー価格抑制に躍起
財界オンライン / 2023年4月13日 15時0分
4月の統一地方選を控え、岸田文雄政権がエネルギー価格の高騰に伴う家計・中小企業の負担軽減に躍起となっている。
電力大手による家庭向け規制料金の値上げ申請に対し、燃料費の再計算を求め、4月からの値上げ実施を先送りさせた。さらに追加の物価高対策もまとめ、LP(プロパンガス)利用者や電力使用量の多い法人向け「特別高圧電力(特高)」の負担軽減にも乗り出す。
岸田首相は2月下旬、電気代値上げについて「4月(実施)という日程ありきではなく、厳格に審査してほしい」と西村康稔経済産業相に指示。これを受け、経産省は直近の燃料輸入価格の低下を反映させて、各社の値上げ幅を圧縮させる方針を決めた。
東北、北陸、中国、四国、沖縄の5電力は4月から、東京と北海道の2電力は6月から、平均28~45%程度の値上げを申請。各社は値上げ幅の算定根拠となる燃料の輸入価格について、昨年11月に申請した東北など5電力は同7~9月、今年1月に申請した東京と北海道はそれぞれ昨年8~10月、同9~11月の平均値を使っていた。
ただ、昨年10月に一時1ドル=151円台を付けた急速な円安も落ち着き、現在、石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入価格は昨年秋をピークに低下傾向にある。
このため、経産省は昨年11月~今年1月の平均値で燃料費を再計算するよう各社に指示。試算では、東京で2536億円、北海道で225億円など、北陸を除き6社で燃料費の圧縮が見込まれるという。
ただ、燃料費の再計算には膨大な作業が必要となるため、東北など5電力の4月値上げ実施は不可能となった。電力業界からは「燃料費計算のやり直しは、統一地方選と電力値上げが重ならないようにするためだ。値上げ先送りで赤字垂れ流しが続く」との恨み節が漏れる。
一方、政府は3月22日にまとめた物価高対策に、LPガス利用者や特高契約を結ぶ中小企業の支援を盛り込んだ。政府は1月から電気・都市ガス代の負担軽減策を開始したが、地方を中心した約2200万世帯のLPガス契約者は支援の対象外だ。
ただ、LPガスの小売業者は全国に約1万7000社が存在し、「政治力も強い」(関係者)。このため「地方創生臨時交付金」を活用し、LP契約世帯への値引き支援などを進める。特高契約の企業支援では、鋳物業など電力使用量の多い中小企業の下支えを狙う考えだ。
【著者に聞く】『エネルギーの地政学』 日本エネルギー経済研究所 専務理事・小山 堅
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